恋に落ちる音。【ＳＳ】 (ページ19)

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もしかして、とある予想が頭に浮かぶ。

鈍感とか、そんなんじゃなく････

単に俺のことを覚えてないじゃないか、って。

「･･･は？まさか俺のこと、好きでもない女に手出す最低野郎だと思ってたの？」

『そ、そこまでは思ってないけど！でも･･･からかってるのかなとは思った。私が男に慣れてないのを知って････』

「からかうにしても言葉だけ。どうでもいい女と手繋ぐとか気持ち悪いし嫌だわ」

『いや何で！？私達会ったばっかなのにそんな･･･！』

「･････やっぱ覚えてないの？」

Aの反応に、ああやっぱり、って肩を落とした。

覚えてないんだ。俺との出会い。

「お前にとってはたった二日前に会っただけの人間かもしんないけど、俺からすれば、二年前からずっと想い続けてた相手なわけ」

『二年！？』

そうだよ、俺が入社した年。

「ずっと忘れられなくて、人事部に行ったら会えるかも？とか思っちゃって････でもここ二年は忙しくて寝る暇もほとんどなくって、全然寄れなかった。それでつい最近落ち着いてきていつ寄ろうかなって考えてたら相葉くんが誘ってくれたんだよ」

『え･･･』

「けど約束の前日、課長に「人事部の様子を見てこい」なんて言われてさ、マジでラッキーだと思った。やっと会えるんだって。すっげえ浮かれてた。････なのに会って早々ニノと間違えられるし」

『見ずに言っちゃって･･･ごめん･･･』

まぁそれに関しては俺が勝手に苛ついただけだから
別にいいけど。

「まぁそれはいいとして。その後なぜか喧嘩売られるし」

『あれは明らか櫻井くんの言い方が悪かったよね！？』

「でも問題はそこじゃない」

俺はAの肩を掴んで、眉を顰めた。

「智くんが、俺のこと睨んだ」

あの、今にも殺しそうな目。

本気でAのこと好きなんだなって思った。

と同時に、一瞬、勝てるのかとも不安になった。

あれは、そんな気持ちになる目だった。

「その後も、「うちのみつき」とか言うし、顔すっげぇ近いし。しかもお前まで「今夜は帰さないで」とか言うし････マジでふざけんなよ･････」

二年前、俺はあんなに嬉しかったのに。

運命だって思えたのに。

･･････いや、まだだ。

諦めるな。

チャンスはある。

初恋だろ？

実らせたいだろ？

智くんに負けたくないだろ？

なら。