恋に落ちる音。【ＳＳ】 (ページ17)

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少しして、Aがこっちにやってきた。

智くんの隣に座ろうとする彼女の手を引き、自分の隣に座らせる。

緊張しているのか、縮こまってる姿に思わず笑みが零れた。

「翔くんって面白いねぇ」

「智くんこそ」

そのまま智くんと会話を続ける。

隣からの視線には気付いてるけど、敢えて合わせない。

ってかそんなにジロジロ見られたらちょっと照れる。

「智くん、営業部に入ったら良かったのに」

「えー、やだよ。走り回ったりするのは向いてない」

「まぁ確かに、のんびりしてるもんね。人事部は楽しい？」

「ん～･･･それなり？」

「そこは言い切ろうよ！」

･･････もうちょっと、困らせてやりたいな。

そんなＳ心のもと、俺は智くんにバレないようにテーブルの下で
Aの手をそっと握った。

びくっ、と肩を上げるA。

可愛い。

「そう、それで＿＿＿＿。････？みつき？黙りこくってどうかした？」

智くんの言葉に、Aは恐る恐る顔を上げる。

絡み合う視線。

俺は耳元に口を寄せ、そっと囁いた。

「･･･いいの？智くんの前でそんな顔して」

『っ、え、』

「ふふ、顔真っ赤だけどさぁ････意識した？俺のこと」

『･････』

「目の前でこそこそ何話してんの」

何でもないよ、と返すと納得していないような表情をする。

少し勝った気になって心に余裕が生まれる。

智くん。

きっと智くんもAと手を繋ぐんだろうな。

抱きしめたり、頬にキスしたり？

でも残念。

男として意識されてんのは俺。

今、Aの頭の中を支配してるのは俺。

智くんは男として意識されたことある？

････まさか。きっとないよな？

意識したことが一回でもあるなら、あんなに近いはずがない。

くっつくはずがない。

簡単に好きだとか言えるはずがない。

「(これは俺の勝ちも同然じゃねぇ？)」

別に勝負してるわけでも、ましてや宣戦布告したわけでもないけど。

それでも今、この現状に少し満足していた。

「翔さん、そろそろ昼休憩終わるよ」

「あ？もうそんな時間？」

「わっ、本当だ！時間が経つの早いね～」

相葉くんは黙って座っているAを見て不思議そうに首を傾げたが、
すぐにニノの元に走って行った。

ニノも潤も何か察したのか、Aに声をかけようとはしなかった。

「それじゃ、出ようか。Aさん」

自分で言うのもなんだけど、めんどくさいのに目つけられたな。