恋に落ちる音。【ＳＳ】 (ページ13)

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「また人事部に寄るからよろしく」なんてラインを送った次の日。

元々昼に約束していたけど、どうしても彼女に会いたくなって
朝から人事部へ足を運んだ。

「おはようございます」

『････おはよう』

挨拶返してくれたけど、頬を手で隠してるし多分引きつってんだろうな。

何でいんの！？って顔してる。

分かりやす。

「相葉くんから聞いてないの？また人事部に寄るって言ったはずなんだけど」

『聞いたうえでの困惑だよ･･･まさか翌日に来るとは思わないじゃん････』

それに櫻井くん忙しいんじゃないの。

彼女の問いに、俺は笑顔で答えた。

「山本に押し付けてきたから問題ないよ」

元々あいつの仕事だけど、と誤解されないよう付け足す。

そうだ、元々一人でやる仕事を全部俺に任せようとしやがって。

てか別に忙しくたって、Aと会うためならいくらでも時間作るっての。

と、ふと、いくつかの視線に気付く。

あー、めんどくせぇな。
女が群がってる。

しかも中にはAを睨んでるやつもいる。

うざったいなぁ、ったく。

仕方ないからサービスしてやるか。

これもAのため････。

心の中でため息を吐きながら女達にウィンクを決める。

するとオフィス内はうるさいほどの歓声で溢れた。
いやマジでうるさいな。猿か。

････唯一、Aが困ったような反応なのが悔しいけど。

『みんな櫻井くんに夢中で作業進んでないんだけど』

「俺のせい？」

睨んできたAが可愛くて、思わず笑みを零す。

「こんなことで仕事ができなくなるならその程度の人間なんだろ」

『あのね･･･櫻井くんに夢中にならない女の子なんかいないんだから。それをちゃんと自覚して････』

「ならあんたは今、仕事できない？」

『え？いや、できるけど』

「･････どっちだよ」

俺に夢中にならない女はいないんじゃねぇのかよ。

いや、俺も最近はそう思ってた。

俺に惚れない女なんかいないだろって。

でもAは全然惚れてくれない。

振り向いてくれない。

好きって言ってくれない。

ただ、アイドルや俳優でも見るかのような、そんなファンのような表情。

別にファンなんかいらねぇよ。

俺はお前の心が欲しいんだよ。

お前のすべてが欲しいんだよ。

お前の愛の言葉が欲しいんだよ。

だから、大野さんばっか見ないで。