〜１２〜 ページ12
「あ、そこ」
あることに気付いて声をかける。
「それじゃ分かりにくいからもう少し細かくしたほうがいいんじゃないの？」
『え？』
「えーっと、大野さん？その資料頂戴」
ついさっきの「今日は返さないで」発言にはめちゃくちゃイラっとしたけど。
でもそれこれとは別。
Aが残業しなくて済むよう作業を進めていく。
････俺、人事の仕事もできたんだな。
完璧すぎねぇ？
大野さんも「すげぇなぁ」なんて感心してる。
ライバルに褒められるのはなんか癪だけど、少し嬉しかった。
「んー、気になんのはそれぐらいかな」
『････ありがとう、櫻井くん』
「別にいいけど････」
ありがとう、と言う割には浮かない顔。
俺、何かやったか？
ちょっと不安になってきた。
「･･･あのさ、」
「翔くん」
何で暗い顔してんの？って聞く前に、潤が遮って駆け寄ってきた。
「山本さんが戻って来いって。今電話があった」
「え？でも来てまだ一時間も経ってねぇじゃん。それに急ぎの仕事は無いはず･･･」
「これから契約取りに行くんだけどそれに翔くんも同行してほしいって言ってる」
「はぁ？」
ムカついて思わず眉を顰める。
「それはあの人の仕事でしょ？つーかこの前、「櫻井には手借りない」とかなんとか言ってたくせに」
「そんなもんだよ。まぁ今更翔くんに媚び売っても意味ないだろうけど」
ケケッ、と馬鹿にするように笑う潤。
せっかくの再会を邪魔しやがって。
山本しね。
俺は深くため息を吐くと、懐から名刺を取り出した。
一応来る前に、Aに渡す名刺の裏にだけ連絡先を書いておいた。
これで俺の気持ちに気付いてくれねぇかな。
「先程は失礼な態度を取って申し訳ありませんでした。再度深くお詫び申し上げます」
『い、いえ、こちらこそ･･･あとそこまできちんとした敬語使わなくてもいいからね』
「じゃあ遠慮なく」
タメ口になると「いや違う」みたいな顔をするA。
可愛い。
「どうせ明日会うけど、一応渡しとく」
『あっ、じゃあ私のも』
「どうも。･･･いや待て」
俺はAの手元を見て思わずツッコんでしまった。
「何で大野さんの名刺も持ってんの」
「俺よく名刺持つの忘れるから」
『あ。ごめん、癖で』
はっきり言って不愉快だ。
なに？幼馴染だからってそんなにくっつく？
「･･･ほんと、大野さんと仲良いな」
『え？』
「それでは失礼します」
ムカつく。
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作者名：みかづち
| 作成日時：2020年5月14日 13時
