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「ねぇ、櫻井くん！」
甘ったるい声を出しながら寄ってくる女達。
内心舌打ちをしながらも、いつの通りニコリと笑う。
「どうした？」
「今日の文化祭、私達と回らない？」
「あー･･･」
はっきり言って文化祭なんて別に興味ないし、それのせいでクラスメイトが
群がってくるのもうざかった。
普段から相手してやってんだろ。
こういう時くらいゆっくりさせろよ。
と、言いたいけど。
残念ながら優等生で通ってる俺にそんなことできるはずがなかった。
「ねっ、いいでしょ！？」
「･･････」
どう断ろうか悩んでる時だった。
視界の端に映った“あいつ”。
「えっと、ごめん！俺、あいつと約束してるから！」
「えっ？あいつって････」
俺の声が聞こえたのか、目を丸くしてこっちを見ている。
悪いな。けどお前だってそうやって女に囲まれて困ってんだろ？
迷惑そうに断ってるし、ちょうどいい。
「ほら、行こうぜ」
「え？あ、ああ、うん」
困惑している男の腕を掴んで教室を出る。
後ろからは歓声が聞こえた。
.
.
.
「はぁ････悪かったな、松本」
「ああ、別にいいよ。俺もどう断ろうか困ってたし」
「だろうな」
隣でため息を吐く男は、同じクラスの松本潤。
男の俺から見てもずいぶん整った顔してんな、と思う。
で、自分で言うなと言われるかもしれないけど、俺もイケメンだ。
そんな俺達はよくペアにされることが多かった。
俺達が並ぶだけで嬉しそうに叫ぶ女達の趣味は理解できないししたくもないけど。
だけど実際、プライベートなことは一切話したことがない。
授業に必要な会話だけ。
そこで俺はちょっとだけ松本に親近感を持った。
ああ。こいつ、無駄な会話とか嫌いなんだな、って。
でもそれだけ。それ以上の感情はないし、「友達になりたい」とかいう考えもなかった。
「そういえば櫻井くんって、進路とか決まってんの？」
「はぁ？急になんだよ」
まだ一年生だぞ、と付け足すと、「確かにそうだけど」と眉を下げた。
「櫻井くんの家って結構厳しいって聞いたから･･･あと継いだりとかするのかなって思って」
「･････別に。厳しいのは門限とか立ち振る舞いだけであって、将来のことは「好きにしろ」って言われてるよ」
でも好きにしろっつったって。
なりたいモンとかないのに、どうしろってんだよ。
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作者名：みかづち
| 作成日時：2020年5月14日 13時
