貴方の名前で私を呼ばないで (ページ7)

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チルチャックにかなり全力の力でよろめきながらも体を抱き止められ、耳元で凄まじい音量の罵倒を受けている。えー、生贄役したのに酷くない？

「っ、それより、2人とも前を見て！！あれ！！」

マルシルの絶叫に階段の上を見あげると、天井の方からぽたぽたと何らかの液体が垂れてきているのがわかった。あれは…ヨダレ？そう思った次の瞬間、縄が天井に物凄い勢いで引かれた。この一瞬でペンローズが私の足を持っていこうとしたらしい。が、仕込んでおいたピッケルが口腔内に刺さっているんだろう。元の場所に戻れずにじたばたと壁際でのたうち回っている様子だ。

ぐぬぅ、とセンシが苦しげな声を上げて必死に縄を引く。

「私も縄を引く！足生やすこと考えたら魔力無駄に使えない！ライオス、お願いッ！」
「任せろ！」

あ、何とかなりそうかな。ライオスが抜いた剣を片手に駆け出ていった。壁際に張り付いたヤモリのような見た目の大きな魔物の頭にそれを突き刺す所を見届けたあたりで、段々と自分の意識が白み始めていることに気がついた。それに猛烈に眠い。マジで眠い。そういえばかなり出血してるわ。じゃあここらで1回休みにするかあ。

ごめん、あとは任せたよ。

そうチルチャックに告げて、私は甘んじて眠気を受け入れることにしたのだった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「お前は、頭が、おかしいのか？」
「いいじゃん、3日かかる所を数時間で出られたんだし」
「あ？」
「ごめん」

目を覚ますと、美味しそうな煮込みにされたペンローズ肉と、目をバッキバキにしてブチギレている4人がそこにいた。ちなみに今「あ？」とブチ切れたのはマルシルだ。1番眼光が鋭い。キレすぎ。ごめんね、蘇生任せちゃって。

私の足は綺麗に治っている。が、ちぎれた、というか自分で切り裂いた服はそのままなので、ショーパン丈になったズボンの隙間から生脚がモロに丸見え状態になっているのが恥ずかしい。

「思ったんだけど」

そんな様子を静かに見ていたライオスが、いつに無く真面目な様子で切り出した。

「足だけとはいえ、1度魔物に食われたわけだろ？もし…Aが明日半分ヤモリのヤモリ人間になっていたら、どうしよう…」

沈黙。というか、全員絶句。お前、それネタにしていいの？いや、え？

色々と言いたいことは皆あっただろう。だが、静かに目を爛々とさせているライオスに皆普通に引いてしまい、誰も、何も、口にすることが出来ないのだった。