貴方の名前で私を呼ばないで (ページ5)

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「ま、とにかく一旦休もう。ちょうどおやつ時だし、甘いものでも食べながらゆっくり考えようよ、焦れば焦るほど逆効果だから」

自分でも言いつつのんきだなあとは思うけど、その他に対処法がないから仕方ない。とにかく落ち着いてなるべく体力を使わないようにしながら過ごすのが今の所一番の対策だ。

「センシ、非常時用に焼いた乾パンとチーズと…あとバターお砂糖持ってたよね？私いいレシピあるんだ。ちょっと貸して」
「しかし、ここでは危なくて火も刃物も十分に使えない。あまり複雑なものは作れんぞ」
「大丈夫！簡単なやつだから」

そう言いながら私は懐からとある黒い丸薬をじゃじゃーん、と引っ張り出した。

「あ、それ、Aが時々飲んでる薬？眠い時に飲むといいって…この前私もちょっと貰ったけど、めちゃくちゃに苦かったような…」
「そ。これでスイーツでも作ろうと思って。実はこれの正体は滅茶苦茶に煮詰めたコーヒーでね」
「カフェインか。体のことを考えるとあまり褒められた代物では無いが…」
「たまにはいいじゃない」

小さい魔法陣で湧かせたマグカップの中に丸薬を入れ、コーヒーを作る。その中にセンシから受け取った乾パンを沈め浸しているうちに、チーズとバターをヘラで無理やり柔らかく解して砂糖と混ぜ、クリーム状にし、最後にそれらを順番に層にして盛り付けたら、簡易的なティラミスもどきの完成だ。

「わあっ、ティラミス。私好きなんだ。いただきます」
「ちゃんとコーヒーのいい匂いがしてる…」
「このバターとチーズのクリームがいい塩梅だ。俺はこれだけでも食べたいな」
「コーヒーは料理には使えないと今まで購入したことがなかったが、こういった使い方もあるのか。知見が広がった」
「ふふ、評判が良さそうで嬉しい」

出来上がったものを1口、口に含むと、ふんわりとコーヒーのいい風味が鼻を通り抜けていく。もちろん地上のそれに比べれば味はかなり劣るが、おいしい。

私はグルメでは無いけれど、食べ物においては風味を大事にしたい方だ、と思う。匂いフェチなのかも。コーヒーとか、カレーとか、ああいう食べ物って匂いを嗅いだ途端猛烈にお腹が空くから凄い。拒食体質を治すとき、こういう匂いのいい食べ物にはかなりお世話になった。

…まてよ？匂い？

「…あっ、いい事思いついた」