12 ページ13
「タバコクセえ」
そう言って男は歩みを止めた。
嫌いな匂いだったのだろうか。
全身から冷や汗が出て止まらない。
ただ、怖くて動けないだけ。
「俺にも考える時間が必要だ。
今から席に座って1本吸う時間を許そう。
その間に荼毘と話し合ってから決める。
ただ、お前は今逃げなかった。」
そう言うと男は「黒霧、灰皿を置いとけ」と指示をしてバーのカウンター席に灰皿が用意された。
「こちらへ。」
『はい。』
私は恐る恐る席に座り、カバンから一本取りだした。
火をつけて1口吸い込むとそのいつもと変わらない煙がつい人の顔のように幻覚が見えた。
、
、
、
「おい。」
2本目を吸い終わる頃、後ろから声をかけられた。
1本目じゃ時間が足らず、2本目を吸っていたのだ。
返事をしてタバコの火を消し、振り返ると手首の皮膚がボロボロになった荼毘とその男がいた。
「お前の話を聞いた。
おい、今からできる限り荼毘の腕を処置してやれ。」
『わかりました。』
私はカバンから包帯と軟膏とガーゼを取り出した。
偶然持ち合わせていたことを感謝しながら私は個性で少し冷えた手を使って燈矢の腕を処置した。
「終わりか？」
『私は治癒能力のある個性を持っていません。
ただ、私にあるのは冷たさによる痛みの軽減と看護師としての知識のみです。
今、荼毘には看護師としてできる応急処置をしました。』
「ほう。」
私をギロリと睨みつける目付きに鼓動が早くなるのを感じながら私は男の言葉を待った。
「決めた。お前のことは殺さずヴィラン連合の一員として迎え入れよう。
活動拠点は指示するが看護師としてこれからも働いてもらう。
あとは囮役だ。
安心しろ、給料は出る。」
私の体からふと重みが消えた気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 92人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユキ(プロフ) - 本好きさん» え〜嬉しいです✨ありがとうございます！ (3月27日 15時) (
レス) id: fcbbcc471e (このIDを非表示/違反報告)
本好き - 更新頑張って下さい‼ 続きが楽しみです(^o^) (3月27日 9時) (レス) id: 6183cd2648 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユキ | 作成日時：2023年9月14日 2時
