太陽の似合うキミを独り占め (橙) (ページ6)

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「もうちょい喋りやすい方がええんかな」

なんて言いながら、少し考える仕草をした後に彼は、ぽん、とわざとらしく手を叩く。

「僕、丸山隆平っていいますぅ。まだ3年目のアマちゃんですっ」

よろしくお願いします。と狭い車内でペコッとお辞儀するマルヤマリュウヘイさんを見て、呆気に取られつつもよろしくお願いします。と挨拶してしまうあたり既に彼のペースに飲み込まれているようで。

「丸ちゃんって呼んでくれたら嬉しいなぁ」

なんて図々しくもあだ名で呼ぶことまで強要してくる丸ちゃんを、私は今訴えたら勝てるんじゃないかな、なんてことまで思い始める。

「ふふ…ちょっとは緊張ほぐれたでしょ？」

「…あ、ほんとだ」

「丸ちゃんね、こういうんだけは得意なんですわ」

仕事できひんけど。と自傷気味に眉を下げて笑う丸ちゃん。

その姿がなんだかすごくきらきらして見えて、仕事が出来なくてもなんだかんだでこの仕事にやりがいを感じて楽しんでいるんだな、というのが伝わってきてなんだか眩しい。

「んで…早めに終わらせましょか」

これに記入して免許証見せてなぁ？と、私にバインダーを渡してくるから頷いてそれに書き込む。

その間も、パトカーを完全に私物化している丸ちゃんは聞きたい歌あったら言うてや！とか、僕最近ネタ作るのハマってるねん。とか、ひたすら1人で喋り続けてくれていて。

まだ捕まったことがないからよくわかんないけど、きっとほかのパトカーに捕まっていたらこんなにリラックスして聴衆を受けることもなかっただろうから不幸中の幸いだった、のかもしれない。

「…できた！」

イケメンに渡す書類な手前、下手な字なんて書けなくて。

元々次がそんなに綺麗なわけじゃない私は10分もかけて丁寧に書類を書きあげたから最後は丸ちゃんもちょっと疲れてペースダウンしていた。

少し申し訳なく思って、両手で書類を渡すと丸ちゃんは救われた！と一気にまた元気になる。
別に、車内が熱くなるほど本気でやってくれなくてもよかったのにな、なんて思うけど彼の優しさに救われたことは事実だから、そんなこと言えない。