太陽の似合うキミを独り占め (橙) (ページ32)

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例えば、それは今の会話だったり。

彼の元に、女の子が数名寄ってきて話しかけたりしているのにも丁寧に返しつつ、誘われてもそちらに流れない所とか。

そんな、些細なことだけど。
そんな一つ一つのことに、キュンキュンともやもやをしていたらいつの間にか時間になっていたようで。

ものすごく素晴らしい暇つぶし__と言ったら聞こえが悪すぎるけど。__が見つかって、少しだけど入社にまた希望が見え始めたから、これから先関わらないにしても彼と今日出会えてよかったと、心から思う。

「それでは、オリエンテーションの会場に移りますので後に続いてください～」

という、これから先輩になるであろう綺麗な黒髪に大きなつり目___首から下げたネームプレートには渋谷とあまり綺麗ではない字で__殴り書き、と表すのが1番正しいかもしれない。__書かれている。___の女性が私たちの前を歩き始める。

彼女は一体いつからここにいたんだろう。

「ん、ほな行こうかぁ」

そんな疑問も一瞬で吹き飛んだのは、隆平が1歩だけ前にいて、私を振り返って手を差し出しているから。

思わず握りそうになるその手を、流石に握れずに、その代わりに隆平の隣を歩く。
その時の少し寂しげな表情。
ほら、こういうところ。

「オリエンテーションて何するんやろな」

なんて言いながら、私が握らなかった手を静かににぎりしめる所とか。

いちいち期待しちゃう私が馬鹿なんですか。
それとも、隆平も私と同じように_______

ｰendｰ