太陽の似合うキミを独り占め (橙) (ページ27)

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temporaryworker ページ27

今日はたまたま仕事が早く切り上げられて、少し気分がよかった。

晩御飯を作るのもいいけど、何だかそれさえもサボってしまって大着な生活を、一日だけしてみるのもいいかな。なんて思いながら電車から吐き出される。

「いらっしゃいー」

田舎でも都会でもない私の住む街は、まだ太陽が沈む前から客を呼び込む声が飛び交っていて、そこらからお酒の匂いがする人が現れる。

なんだか、そういう場所に一人で行くのも今日は違う気がしてどのお店に入るか迷っていると、いつの間にか家から1番近いコンビニの前まで来てしまっていて。

駅から家までは特段離れている訳でもないから、戻ろうと思えば入れるお店は沢山あると思うけど。

何だかそれもめんどくさくて、結局コンビニに吸い込まれてしまう。

いいもんね、ここで贅沢にいろんなものを買って帰ろう。
そんな贅沢だって、きっとおかしくないはずだ。

「いらっしゃいませー」

なんて、入った瞬間に聞こえる少し間延びした声はきっと、どこにでも居るやる気のないバイトくんのものなんだろう。

それでも、さっきの客を呼ぶ声よりは全然心地よくて、嫌な気持ちにはならないから不思議なもの。
いや、この声がきっと良かったんだ。

ほかの間抜けそうなバイトくんたちには普段から少し苛立ったりもしているから、きっと。

「なにたべよ」

まだ早い時間で、お菓子コーナーに子供が数人いるだけのコンビニは私には広く感じる。

贅沢を求めてコンビニに入ったのに、少し寂しくなるのは何故だろう。
そんな寂しさから早く抜け出したくて、適当に美味しそうな惣菜とおつまみ、そして数本のお酒をカゴに入れてレジに向かう。

「ありがとうございます～」

なんてまた間延びした声が、今度は正面から聞こえてくる。
この時間帯はきっと客が少ないんだろう。

店員は目の前にいるバイトくんしかいなくて、普段よりも多めの品数を一生懸命ピッピとレジに通していく手元をぼやっと眺めていた。