太陽の似合うキミを独り占め (橙) (ページ23)

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きっと、ここによく来る女性達のように可愛らしくは自己紹介はできていないだろうけど。
しっかりとリュウさんの目を見てそう言い終わると、彼は笑顔でありがとう。とまた首を傾げる。

彼のこの仕草は、これまで見てきた男性の中で一番可愛らしくて、彼の前にいることを少しだけ恥ずかしくなったりもするけど、リュウさんはちっともそんなこと思ってないかのように振る舞ってくれる。

「Aちゃん…可愛ええ名前やね」

Aちゃん、Aちゃん…
まるで子供のようにそう繰り返す彼はきっと、務め始めたばかりなんだろう。
次に話す言葉を探しているように見えるから、それもまた可愛くて。

「A、そろそろ行こうか」

そう聞こえるのとリュウさんが口を開くのはほぼ同時だった。
慌てて上司の方を見ると、まだだらしなく緩んだ顔をしながらも冷たい目を私に向けていて。

すみません。と慌てて上司に頭を下げると一気に現実に戻された気がして少し寂しい気持ちになる。

せっかくリュウさんがお話してくれようとしてたのにな。

私一人だったらもうこんな場所にも来ないだろうし…素敵な出会いだと思ったのにな。

もう少しお話してたかったな。

なんて私の想いは上司にもリュウさんにも伝わらないのだろう。
よく考えてみたら、リュウさんにとっても私は数いるお客様の一人なわけで。

慣れない場所に来て舞い上がってしまった自分が、急に惨めになる。

「Aちゃん…？」

荷物や服を整えようと立ち上がろうとした時、リュウさんの優しい声がそれを引き止める。

「はい…？」

もうこの声も聞けないのかぁ。なんて思ってしまうあたり、だいぶ彼に惚れ込んでしまっているようで。

ゆっくりとリュウさんの顔を見ると、その顔は物凄く悲しそうな顔をしていて。

「Aちゃん、物凄い悲しそうな顔してはるから…」

そう言って私の手を握るリュウさんは、やっぱりホストなんだなぁとしみじみと思ってしまう。