太陽の似合うキミを独り占め (橙) (ページ22)

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自分が吐こうとしていた悪態や取ろうとしていた可愛くない態度はどう自分を奮い立たせても出てきてくれなかった。

「そやろなぁ。お姉さん綺麗やからこんなとこ来んでも大丈夫そうやもん」

聞きなれない関西弁を操る彼は、周りにいるホストのように髪の毛をつんつんさせているわけでもなく、地味な色の髪をふわっと遊ばせている。

なんだか垢抜けない印象の彼は服装こそこの店に馴染もうと頑張っているものの、所々浮いていて、それが今の私と重なる。

「ごめんなぁ、僕みたいなんしか相手できひんくて」

人気の人達はお姉さんの上司に付きっきりで。と、申し訳なさそうに眉を下げて目を伏せるのももしかしたら彼の戦略かもしれない。と思いつつ、それでもいいや。と思うのは彼の見た目に一目惚れしてしまっているから、なのかもしれない。

飾っていないのにこの店の誰よりも輝いて見える彼は、ここ数年恋愛をしていない私が一目惚れするには充分すぎる相手だった。

「いえ…あの、お名前は？」

そう聞き返すと、彼は私が心を開いたのがわかったのか、とても嬉しそうな顔をするからこの店に来てから抱いていた不快感は飛んでいってしまって。

「リュウです」

「リュウさん…素敵な名前」

「ここのオーナーさんがつけてくれてな？」

でも…僕に着こなせてるんかな、とまた眉を下げて笑う彼に、何も言わずに頷く。

「なんか、珍しいなぁ。ここ来る女性はみぃんなやらしい目ぇしてるとおもうてたけど…」

お姉さんの目はなんか、優しい目しとる。
と、リュウさんは目尻を下げて笑う。

あなたの方こそ、優しい目をしてるじゃない。
なんて、口にはしないけど…彼の目も声も言葉も、全てが優しくて。

ホスト通いをするおば様たちの気持ちが物凄くわかる気がした。

「お姉さんの名前、聞いてへんかったな」

教えて貰ってもええ？と、目の前で可愛らしく首を傾げるリュウさんに拒否する理由なんかなくて。

「Aっていいます」