＊いい夫婦の日(黒) ページ10
「今日何の日か知ってる？」
「うーん、11月22日…良いチューチューの日。ネズミの日やな。」
なんて、スウェットでソファに寝転びながら旦那が答える。
「いいネズミの日って初めて聞いたんだけど」
「え、ハズレなん？」
真剣に答えたということに驚きつつ、違うよ。と告げると、また頭を抱えて考え出す裕くん。
「いいネズミの日やからディズニーランドかどっか行こう言われるんちゃうかと思って心の準備しててんけど」
なんて呟く彼に、じゃあ行きたい。と言うと、今日ネズミ日やあらへんのやろ。なんて冷たくあしらわれる。
「ねぇ、ほんとにわかんないの？」
結構有名だと思うんだけど、と不貞腐れてると裕くんがあぁ、と手を叩き血色のいいプルプルの唇を開く。
「分かったわ」
「お、次こそ当ててね」
なんて言いながら彼の答えを待っていると、彼が立ち上がって冷蔵庫から何かを持って戻ってきた。
「コンビニのやけど」
なんて照れくさそうに笑いながら、袋から取り出したのは丸い小さなショートケーキ2つ。
「いい夫婦の日、やろ今日」
「…ばか、知ってたんじゃん」
「まさかAから切り出されると思っとらんくてめっちゃ焦ってん」
なんて笑いながら手汗見て、と掌を見せてくる。
確かに目で確認できるほど彼の手には汗が浮かんでて。
「いっつも一緒におるからあんま言わんけど、ほんまにAには感謝しとる」
「俺と結婚してくれてありがとうな」
なんて澄んだ目で見つめられる。
夫婦になって、しばらくこんなことも無かった気がするから少しだけドキドキしてしまう。
「こちらこそ。私を選んでくれてありがとう」
「なんか、照れるわ。」
なんて顔を真っ赤にしながら裕くんが笑う。
「そろそろ食べよか」
なんて裕くんが言うからふわふわした雰囲気で2人でケーキを食べる。
コンビニものとは思えないくらい美味しく感じるケーキを食べながら、裕くんが一言
「じいばあなっても俺らこんままええ夫婦でおろな」
と呟いた。
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作者名：さくら | 作成日時：2018年11月20日 18時
