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その言葉の意味がよくわからなくて、首を傾げた瞬間、会場を照らしていた照明が落ち、ファンの子たちの黄色い歓声が沸く。
そこから始まったLIVEはほんとに一瞬だった。
日常を忘れるくらいに楽しくて、みんながキラキラ輝いていた。
忠義以外のメンバーは関係者席の前をそれぞれの親やメンバーの親族なんかに軽く会釈をして通っていく。
忠義はまだこの席の前を通っていない。間近で見たかったな、なんて少しだけ思いながら、次の曲がアンコールの最後、本当に最後の曲だと、忠義の声で聞こえてくる。
最後は各ステージにいるメンバーがメインのステージに曲中に戻っていくようで、私の前は誰が通るんだろう、なんて思ってた時。
「Aちゃん、来るで」
なんて肘を忠義のお母さんに揺すられてステージに目をやると、直前までファンに手を振っていた忠義が関係者席に目をやり、軽く会釈して通り過ぎようとしていた。
ふと、忠義と目が合った気がした。LIVEとかでよく目が合ったとかあるけど、なんかそんなことと違う。
忠義の表情は一瞬だけ、目を丸くして笑顔を忘れていた気がするし。
まぁ、私の事なんか覚えてないと思うし、思い違いなのかもしれないけど…。なんて自虐をしつつ、LIVEが終わり、ファンのみんなが規制退場で帰っていくのをぼんやりと眺めていた。
「どう？忠義、ちゃんとアイドルしとったやろ」
忠義のお母さんがそうやって笑ってくるから、素直に感動しました、なんて笑う。
ファンのみんながもう全員帰ってしまって、関係者席もゆっくりと帰れることになって、私たちも荷物をまとめ始める頃、
「まって、A」
と、誰かに呼び止められる。
辺りを見回すけど、周りには私の名前を知っている人は忠義のお母さんしか居なくて。
誰だろう、と忠義のお母さんの方を見ると、
「声変わりしたん、テレビで見て気付かんかった？」
と、笑われる。
その言葉で、名前を呼んだのが忠義だということに気付いて、さっき引っ込んでいた涙が何故かまた溢れだしてくる。
「そこ、おるから」
と忠義のお母さんが花道の下の暗幕を指さすから、お礼を告げてその方向に小走りで向かう。
幕を開けると、身長が高くて顔が小さい、汗びっしょりの人間がたっていて。
「やっと会えた…」
なんて言われなきゃ、誰かわからなかったと思う。
「忠義、なんだよね？」
「おん、気付いてくれへんかったから泣きそうやってんぞ、」
と私を待つ間の感想を伝えてくる。
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作者名：さくら | 作成日時：2018年11月20日 18時
