まだ見ぬ地図～短編集～ (ページ40)

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このままほっておいたらオーバーヒートしてしまいそうだな、と思ったからしばらく動かずにそこに居ると、今度は丸ちゃんの方から話しかけてくる。

「さっきは、急に掴んでごめんなぁ」

汗もかいとったやろ、気持ち悪かったよなぁ…。なんて、弱々しく呟く彼がなんだか可愛く見えて、大丈夫やで。と返す。

「あの…俺部活中やねんけど、なんでここにおるんやろう…とか思わへん？」

「あ、うん…思っとったけど…」

忘れ物かなにかしたのかなって。と呟いたあとに、違うの？と尋ねれば丸ちゃんはまた少しだけ慌てて、俯いた後に、ちゃうよ。と小さすぎて聞こえない声で呟かれる。

じゃあ何、と首を傾げると丸ちゃんが目線だけ、こちらに寄越してきて、数秒間だけ目が合う。

普段は人気者過ぎて丸ちゃんとは二人きりで話すなんてできないし、こんなチャンス二度とないと思うのに、何故かすごく冷静に会話できる自分にびっくりした。

「大好きな部活サボってまで、ここ来たん…Aちゃんに会うためやねん」

目線だけ、きちんと合わせてその他は私から逃げてしまっている丸ちゃんの口から出た言葉は私の頭が理解するのには少しだけ時間がかかって。
これが現実なのか、まだよくわからなくて少しだけぼうっとしてしまう。

その沈黙を悪い方に受け取った丸ちゃんはあああ、と膝に手をついて必死に崩れ落ちるのを我慢しているようにも見えて。

「あの…それって…どう受け取ったらええんやろう」

そんな彼を見ながら、必死に声を絞り出すと丸ちゃんはそんなこと聞かんといてよー、なんて顔を抑えながらまた真っ直ぐにたって、今度は私のことをしっかりと見つめて。

「言わんでもわかるやろ…Aちゃんに好きって言うためや」

なんて言うからその瞳の真っ直ぐさに思わずやられそうになる。

「みんなおるとこやったら、こんなん言えへんし…
放課後、いっつも教室おるって聞いたから…」

誰がチクったんだろう。丸ちゃんは自分のこと見てるって気付いてたのかな。
恥ずかしいなぁ、なんて私は告白されているのにやっぱり変に冷静で。

でも、嬉しくないわけじゃなくて。
不思議な心で居るのはきっと目の前にいるのが丸ちゃんだから。