* ページ37
「僕な、この時代の人とちゃうねん」
初っ端から彼から告げられた事実はやっぱり上手く飲み込めなくて。
少しだけ笑ってしまいそうになるのを必死に耐えた。
「未来でな、ちょっと大変なことになっとってこっちの時代に逃げてきててん。」
そんなことを言いながら、彼の目は少しだけ俯き気味で。
それなのに私の手はやっぱり優しく握ってくれているから黙って話を聞く。
「いざ来てみたらめっちゃ可愛ええ子がおって、僕舞い上がってもうて」
フェイクでお店作って、その子誘き寄せてデートまでしてもうて。
…それが、Aさんやねんけどな。
なんて、言われてもやっぱり現実のことだとは思えなくて。
頭の中がぐちゃぐちゃなままその話に頷く。
「未来での掟忘れてて、告白してもうたんやんか」
やから、未来に帰らなあかんくなってもうて。
なんて、自分勝手な言葉を次々に生み出す安田さんはもう何だか信じる信じないの話の前に、言葉の意味がわからなくて。
「…安田さんは、未来から来たの?」
なんて、やっとの思いで声を絞り出すと
「おん」
なんて言う。
話によると、20年後の未来から来たようで。
未来ではタイムスリップは割と一般的に行われているからそのための法律なんかもあって、そのひとつに狷韻源代の人間以外と愛を育んだらその後一切のその時代へのタイムスリップを禁ずる瓩覆鵑討いΑ安田さんが犯してしまったものがあるらしい。
「じゃあ…私があの時頷いてしまったから、帰らなきゃ行けなくなっちゃったんですか?」
「そういうわけとちゃうけど…」
惹かれあってもうたのが、ダメやったわけやからなぁ。なんて言いながら私の手を握っていない方の手で少しだけ困ったように頭を搔くと、ため息をつく安田さん。
「僕はもうここにあった店の店主には戻れへんし、この時代でAさんの前に立つことも出来ひん」
なんて、わからず屋な私に言い聞かせるように、まるでその選択肢しかないんだからもう何も言うな。とでも言うように少しだけ強い口調でそう言い放つ彼は何だかとても怖くて。
「じゃあ…私が未来に行くことは出来ないの?」
「出来ひん、それも禁止されとる」
「もう…絶対に会えないの?」
「そういうことやねん。」
あぁ、出会って三日目のクセにここまで彼に惚れていたなんて。
別れなければいけないなんて嫌だし、彼を手放したくない。
88人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくら | 作成日時:2018年11月20日 18時