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なんて、唇に手を当ててシー、とウィンクする丸ちゃん。
そんな行動一つ一つに対して、平然を装うのがやっとなくらい、私の心臓はバクバクと音を立てて体を熱していく。
今の一瞬で、こんなに心が苦しくなるなんて。
気付いた時には、私は丸ちゃんの袖を掴み、
「もっと、お勉強したい…」
と呟いていた。
何やってるんだろう、私。
直ぐに我に返って手を離して離れる。
丸ちゃんは、びっくりした顔をしたあとに、また眉を下げて悲しそうに笑い、聞こえへん。と言った。
これは、私の気持ちの最終確認だ、なんて直感でそう思った。
「意地悪、」
「じゃ、鍵閉めるんで部屋出てな」
「丸ちゃんのばか、」
「先生にバカ言わんの」
「…もっと、勉強教えてください」
「急に素直になりおって」
よく出来ました、と丸ちゃんが笑う。
そして、ホンマにええんやな。ともうほとんど男になった丸ちゃんの目を見つめ、頷くと、右手に私の荷物を持って、左手で私の腕を掴んで数学準備室へ向かった。
「丸ちゃん…」
「惚れてもうた？さっきので」
「…」
黙って頷くと、丸ちゃんがふっと笑う。
そして、私の頬に優しく手を添えると、
「可愛ええな、Aちゃん」
と私にやさしいキスをする。
お勉強始めよか、なんて優しくて力強い声で囁かれると、私たち二人は非、現実に堕ちて行った。
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
数日後。
私たちの関係はあれっきりで、丸ちゃんも私も、何も無かったように学校生活を送っている。
「じゃあ、テスト返すで」
出席番号順に取りおいで、と教卓で笑う丸ちゃん。
私の番が来て、テストを受け取る。
…欠点ギリギリ。
丸ちゃんが、私が点数を確認したことを見て、耳元で
「またお勉強した方が良さそうやな」
なんて笑いかけてくる。
その意味をちゃんと理解して、私は頷く。
すると、丸ちゃんは少しだけ嬉しそうに
「じゃあ今日の放課後数学準備室で補講な。」
とグーサインを見せてくる。
いたずらっぽく笑いながら、普通に大きな声でそんなことを言うから、その後、しばらく私の点数がいかに悪いのかと好奇心の目でクラスメイトから見られたのは言うまでもない。
-end-
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作者名：さくら | 作成日時：2018年11月20日 18時
