＊お誕生日(橙) ページ23
学校に通って留学して、いろんな努力を経てやっと手に入れた私の店は、やっと最近軌道に乗ってきた。
パティシエをやっている私にとって、自分の好きなお菓子を作ってそれを美味しいと言って食べてくれる人が居るのが一番幸せなことで。
「今日も来てもうた」
なんて、照れくさそうに笑いながら今目の前に立つお客さんも週に２回来てくれる常連さん。
「丸山さん、いつもありがとうございます」
なんて笑いかけると、その倍の笑顔で返してくれる素敵で返してくれる、関西から上京してきたらしい彼の名前は丸山さん。私はその笑顔に一目惚れしてしまってる。
「えへ、Aさんの作るお菓子はほんま飽きひんねん」
なんて言いながら、いつもは立たないケーキのケースの前で屈んで迷ってる丸山さん。
普段は小さなマカロンだったりクッキーだったりを一つだけ買ってお店で食べて帰っていくからなんだかその姿が新鮮で。
「なんか、珍しいですね」
なんて声をかけると少しだけ頬をピンクに染めて、丸山さんが顔を上げる。
ええ歳してって、笑われるかもしれんけど。なんて笑いながら
「昨日、僕の誕生日やったんですよ」
昨日は来れなかったし、今日はケーキ食べたいな、なんて思って。と可愛い理由を呟く。
そんな丸山さんを思わず愛おしい目で見てしまって、彼に気付かれないように急いで目を逸らした。
「おめでとうございました！なんか、プレゼントでも出来たらいいんですけど…」
なんて言いながら周りを見渡す。
プレゼントとして渡せるものなんてあまり周りになくて戸惑っていると、丸山さんがほんまですか？なんて笑いかけてくる。
「はい、あの…ここにあるお好きなもの持っていってください」
なんて、丸山さんがいつも買う小さな焼き菓子達が置いてある棚を指さす。
すると、丸山さんが少しだけ眉を下げて
「あの…それやなくて、」
なんて言うから、思わずえ？と聞き返してしまう。
焼き菓子じゃ嫌だったかな、と思い他にプレゼントできるものを探していると
「プレゼント…もしええんやったら、僕と一緒にケーキ食べてもらいたいなって」
と丸山さんが私を見て言うから、そんなのでいいんですか、なんて聞くと、
「Aさんやから、一緒に食べたいんです」
誕生日祝って欲しくて、なんていたずらっぽく笑う丸山さんに、私でよければぜひ。なんて頷く。
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作者名：さくら | 作成日時：2018年11月20日 18時
