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「なんか、ごめんね」
なんて、心からの謝罪がポツリと漏れる。
私が丸ちゃんからバッグを奪ったのに、ダサくコケて結局丸ちゃんは2つの荷物だけじゃなくて私まで背負わなければ行けなくなってしまっていて。
表情は見えないけどきっと、キツくて歪んでいるはずだ。
どれだけ人がいい丸ちゃんでも、女の子を背負って両手に荷物を持ってへらへらしていられるわけが無い。
それでも、
「Aちゃん、ご飯食うてる?めっちゃ軽いやん」
なんて、平気な声のトーンで私に話しかけてきてくれるのは丸ちゃんの優しさなのかもしれない。
「最近食べたもの言うてみ?」
「…丸ちゃんと食べた食べ物しか覚えてない」
「わ、それはあかんなぁ」
ほんなら今日は忘れられへんくらい美味しい物食べよなぁ、と丸ちゃんは優しく呟いて最後の一段を降りる。
1人で登るのも少し辛い階段を、沢山の荷物と二人分の体重で降りてきた丸ちゃんは来世でもちゃんと報われるべきだ。
私が今から神様にお願いしておこう。
「スキー場の前にな、美味しい定食屋さんがあるらしいねん」
ふと出てくる食べ物が定食だということに、少し年齢差を感じながらも食べたい。と言ったのは嘘なんかじゃなくて。
丸ちゃんが呼んでくれたタクシーに、シートにタオルを1枚引いて泥がつかないように乗りながら2人で丸ちゃんのケータイをのぞき込みながら、一応別の食べ物もチェックする。
「うーん、定食だね」
「せやなぁ、一番惹かれるわ」
なんて言いながら、食べ物が決定してケータイを直す丸ちゃんの手が、一瞬だけ止まる。
何か通知が来たのだろう、通知バーを上にスライドする丸ちゃんの親指が少しだけ震えているように見えて、顔を覗き込む。
丸ちゃんは、少しだけ悲しそうな目でその画面を見ながらため息を着く。
私が覗き込んでいることに気付いたのはその後だったから、きっとかなり大事な要件だったんだろう。
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櫻華(さくら)(プロフ) - さらさん» コメントありがとうございます!そう言ってくださると頑張って書いた甲斐があります(^^)応援もありがとうございます!ぜひ、楽しんでいただけたら嬉しいです! (2019年3月1日 22時) (レス) id: 04bcbb370b (このIDを非表示/違反報告)
さら - 読み終わって、本当に、本当に大好きな作品です!新作も頑張ってください!応援してます!(^○^) (2019年3月1日 21時) (レス) id: 774dc9dc2f (このIDを非表示/違反報告)
世現身(。。) - 櫻華(さくら)さん» はいw楽しみにしてますー。 (2019年1月19日 16時) (レス) id: 85930732e3 (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(さくら)(プロフ) - 世現身(。。)さん» ありがとうございます!完結まで走り抜けますので、ぜひ楽しんで読んでいただけると嬉しいです(´˘`*) (2019年1月18日 17時) (レス) id: 04bcbb370b (このIDを非表示/違反報告)
世現身(。。) - 続編おめです!これからも応援します!!(。。)♭ グッ (2019年1月17日 21時) (レス) id: 85930732e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら | 作成日時:2019年1月14日 13時