*ビタースイート ページ28
きっと鼻で息をしろという丸ちゃんの合図を受け取って、思いっきり息を吸い込むと少しだけ楽になる。
でも、鼻で頑張ったって吸い込める量はたかが知れてるでしょ。
だんだん苦しくなっていって、目を開けると丸ちゃんも苦しそうに、でも見たことの無い色っぽい表情で私とのキスを味わっていて。
「っ、」
丸ちゃんが小さく声を漏らしたかと思えば、顔が離れていく。
どうやら丸ちゃんも限界が来ていたらしい。
「…はじめて?」
「うん」
「わ…ほんならこんなムード無いんあかんかったな…」
丸ちゃんはそう言って困ったように笑いながら背もたれに身を任せる。
私はまだ、浮いたままの気持ちを整理できなくてなんとなく背筋をぴんと伸ばして椅子に浅く座る。
「そんなこと…」
「ごめんな?」
なんて、私の言葉を遮るようにして、わかりやすくひきつった笑顔で見られると丸ちゃんの感情がわからなくて返事が出来なくなる。
「Aちゃんはさ、東京戻って僕と離れてももう…大丈夫やろ?」
僕があげられる最上級のパワーはあげたから。
なんて、途端に突き放すような丸ちゃんのそのセリフと、それに似つかわない丸ちゃんの笑顔__やっぱり引きつっていて、苦しそうに笑うのは見ている方が辛くなってしまう__は私に拒否権なんて与えていなくて。
丸ちゃんはまた1人になってしまうのが怖いのかもしれない。
丸ちゃんもちゃんと私と過ごす日々を楽しんでいてくれたんだろう。
丸ちゃんは___…
「大丈夫…」
そう呟けば、丸ちゃんの顔は少しだけ柔らかくなったように見えて。
丸ちゃんが望んでいるのは私と幸せに別れること。
丸ちゃんがこれから歩む未来を私が気にかけないように、これっきりだったと思わせること。
…そんなことなんだろうな、なんて感じ取ってしまう。
「よかっ…」
私に何も悟らせまいとふぅ、とため息をついてから無駄に明るい声で喋ろうとするから、今度は私が言葉を被せる。
やり返し、と言ったらかなり幼稚だけど。
「なわけないでしょ」
変なところで急に大人な丸ちゃんを見せてくるから、私だって変なところで急に__ではないのかもしれないけど__子供なところを見せてやる。
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櫻華(さくら)(プロフ) - さらさん» コメントありがとうございます!そう言ってくださると頑張って書いた甲斐があります(^^)応援もありがとうございます!ぜひ、楽しんでいただけたら嬉しいです! (2019年3月1日 22時) (レス) id: 04bcbb370b (このIDを非表示/違反報告)
さら - 読み終わって、本当に、本当に大好きな作品です!新作も頑張ってください!応援してます!(^○^) (2019年3月1日 21時) (レス) id: 774dc9dc2f (このIDを非表示/違反報告)
世現身(。。) - 櫻華(さくら)さん» はいw楽しみにしてますー。 (2019年1月19日 16時) (レス) id: 85930732e3 (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(さくら)(プロフ) - 世現身(。。)さん» ありがとうございます!完結まで走り抜けますので、ぜひ楽しんで読んでいただけると嬉しいです(´˘`*) (2019年1月18日 17時) (レス) id: 04bcbb370b (このIDを非表示/違反報告)
世現身(。。) - 続編おめです!これからも応援します!!(。。)♭ グッ (2019年1月17日 21時) (レス) id: 85930732e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら | 作成日時:2019年1月14日 13時