* ページ27
丸ちゃんが、私の唇に優しく、触れるだけのキスをして封じた私の別れを寂しがる言葉は虚しくも、心に戻っていく。
ゆっくりとバスが動き始める感覚と、さっき丸ちゃんをかっこいいと言った子達が小声で楽しそうに話しているのが聞こえてくるけど、丸ちゃんの唇はまだ私のそれに重なっていて。
「…っくるしいっ」
触れるだけのキスは、それでも長いと苦しくて。
とん、と丸ちゃんの胸を押すとゆっくりと離れていくのが寂しくて思わず丸ちゃんの顔を両手で捕まえる。
「…どうしたん?」
なんて見透かしたような目で、それでも何も知りませんとでも言うような顔を作って私を覗き込んでくる丸ちゃん。
「…もっと、」
「もっと…?」
意地悪にそう反復しながら首を傾げる丸ちゃんを睨む。
目の前にある丸ちゃんの顔を見つめることも出来ずに、顎にあるホクロをぼんやりと見ながら丸ちゃんの求めている答えを探す。
「して…?」
「何を?」
想像以上に意地悪な丸ちゃんの耳を自分の唇に近づけて、小さな声で、本当に丸ちゃんにしか伝わらないような__下手したら、丸ちゃんにも聞こえないかもしれない__声で伝える。
「…きす、して」
「…ふふ、よく言えました」
私の勇気を丸ちゃんは優しく笑って、私の手を解く。
片手で私の顎を持ち上げて、またゆっくりと私の唇に戻ってくる彼の薄い唇の感触。
東京に戻ってしまえば求めることが出来ないのだから、このバスの中くらいわがままを言わせて。
欲しいものを欲しいと願わせて。
丸ちゃんを感じながらそんなことを思う。
丸ちゃんは、何を思っているんだろう。
「力、抜いて?」
と、囁かれてその通りにするとゆっくりと丸ちゃんが口の中に入ってくるのを感じる。
初めてする大人なキスは想像よりも何だか、ちょっとだけ気持ち悪くて。
でもなんだかひとつになったような気がして、幸せを感じる。
「っ…」
音が出ないように、丁寧にゆっくりと優しく動き回る丸ちゃんの胸をまたとん、と押す。
でも丸ちゃんは私の鼻をツン、と押すだけで離れてくれない。
209人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
櫻華(さくら)(プロフ) - さらさん» コメントありがとうございます!そう言ってくださると頑張って書いた甲斐があります(^^)応援もありがとうございます!ぜひ、楽しんでいただけたら嬉しいです! (2019年3月1日 22時) (レス) id: 04bcbb370b (このIDを非表示/違反報告)
さら - 読み終わって、本当に、本当に大好きな作品です!新作も頑張ってください!応援してます!(^○^) (2019年3月1日 21時) (レス) id: 774dc9dc2f (このIDを非表示/違反報告)
世現身(。。) - 櫻華(さくら)さん» はいw楽しみにしてますー。 (2019年1月19日 16時) (レス) id: 85930732e3 (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(さくら)(プロフ) - 世現身(。。)さん» ありがとうございます!完結まで走り抜けますので、ぜひ楽しんで読んでいただけると嬉しいです(´˘`*) (2019年1月18日 17時) (レス) id: 04bcbb370b (このIDを非表示/違反報告)
世現身(。。) - 続編おめです!これからも応援します!!(。。)♭ グッ (2019年1月17日 21時) (レス) id: 85930732e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくら | 作成日時:2019年1月14日 13時