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「Aちゃんはほんまにかわええなぁ。」
なんて、丸ちゃんが呟くからそんな雪の冷たさでさえも再度火照る私の身体を覚ますことはできないようで。
「帰ってもうたら、お別れになってまうんかなぁ僕達」
私が返事を出来ないでいると、丸ちゃんはポツポツと空を見上げながらそう呟く。
浮かんでいた雲達がいつの間にか流されて、素晴らしく晴れた空__このシーズンでこんなに晴れることは珍しいらしい。やっぱり丸ちゃんのパワーは想像を遥かに超えてくる__の、一体どこを見ているんだろう。
「Aちゃんは、なんも知らんって言うんやで。勝手に連れていかれましたって。」
そんなことを言う丸ちゃんの言葉を、わざと聞こえないふりをして同じように空を見上げる。
雪の上から見る空は普段とそんなに変わらなくて。
心做しか少しだけ冷たい色に見える空を見上げながら、それでもやっぱり帰ってからのことを考えてしまうのも事実で。
「僕はAちゃんとの思い出があれば、捕まってもなんとかやっていける気がするなぁ。」
今こうやって、何もせずに寝転んでいるこの時間さえも宝物に感じるんやろうなぁ。そしたら。
なんて、寂しそうに呟いて深呼吸をする丸ちゃんの方を、やっと向けた。
そんなに深く息をしたら体の芯まで冷えちゃうじゃん。
そんなことも言わずに、少しだけお尻でズレて丸ちゃんにぴったりと密着する。
ぎゅっと丸ちゃんの身体の上に抱きつくように腕を置くと、ピクっと反応する丸ちゃん。
「きっとわかってくれる人もいるよね」
「ん、どやろなぁ。自分の娘がおっさんに誘拐された思うたら僕は気が狂いそうやけど」
丸ちゃんは相変わらず、空を見上げたままそう呟く。
ふと、バスの中で丸ちゃんに付けられたキスマークの部分が疼くような気がして。
「うちの親は、丸ちゃんみたいに出来た人じゃないから」
「…それが事実でも、そんなこと言うたらあかんよ?」
Aちゃんを産んでくれてなかったら、こんなに素敵な経験をすることもなかった。
と、幸せを噛み締めるようにそう微笑むから、丸ちゃんに抱きつく腕に込める力をもっと強める。
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櫻華(さくら)(プロフ) - さらさん» コメントありがとうございます!そう言ってくださると頑張って書いた甲斐があります(^^)応援もありがとうございます!ぜひ、楽しんでいただけたら嬉しいです! (2019年3月1日 22時) (レス) id: 04bcbb370b (このIDを非表示/違反報告)
さら - 読み終わって、本当に、本当に大好きな作品です!新作も頑張ってください!応援してます!(^○^) (2019年3月1日 21時) (レス) id: 774dc9dc2f (このIDを非表示/違反報告)
世現身(。。) - 櫻華(さくら)さん» はいw楽しみにしてますー。 (2019年1月19日 16時) (レス) id: 85930732e3 (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(さくら)(プロフ) - 世現身(。。)さん» ありがとうございます!完結まで走り抜けますので、ぜひ楽しんで読んでいただけると嬉しいです(´˘`*) (2019年1月18日 17時) (レス) id: 04bcbb370b (このIDを非表示/違反報告)
世現身(。。) - 続編おめです!これからも応援します!!(。。)♭ グッ (2019年1月17日 21時) (レス) id: 85930732e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら | 作成日時:2019年1月14日 13時