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投げ返したのはいいんだけど、命中力なんてカスほどもない私の雪玉は丸ちゃんの目の前に落ちていく。
へなちょこな放物線は、丸ちゃんの目に入ると思いっきり笑われて。
「Aちゃん下手くそ過ぎやそれは」
と言いながらまた笑顔で容赦のない雪の玉を投げてくる。
雪合戦は仁義なき戦いなことくらい私だってわかってるけど、あまりにも力の差がありすぎてだんだん面白くなくなってくる。
私のウェアは投げつけられた雪が落ちずに残っていたりして、だんだん白くなっていく。
「雪だるまみたいや」
綺麗やで?と、少し馬鹿にしたように丸ちゃんが笑うから、何だか腹も立つけど少し浮かれてしまって。
「もー…くそっ」
そんな丸ちゃんのことも雪だるまにしてやりたくて、少し離れたところから助走をつけて丸ちゃんに突進する。
「わ…は!?」
ぶつかる瞬間痛っ、と声を漏らした丸ちゃんはそれでも私を支えるように抱きしめてそのまま雪に沈んでいくから、道連れになる訳で。
「びっくりした…」
と、小さな声でつぶやく丸ちゃんの顔が、目の前にあるから私は息すら出来なくなる。
私が上で、丸ちゃんが下。でも私が押し倒したようには見えないのは腕まですっぽりと抱きしめられているせい。
「…すき、」
なんだかゲレンデマジックにかかってしまったようで、思わず呟いてしまった自分に少し驚く。
「ん?」
上手く聞こえへんかった。と、丸ちゃんは困ったように眉を下げるから、なんでもない。と首を振れば、今度は丸ちゃんが
「僕も好きやで。」
と、口角だけをあげる。
「聞こえてたんじゃん」
と、照れ隠しに丸ちゃんを小突いてみる。
人と、同じように思い合えることがこんなに幸せなことなんて私はほんとうに、悲しいことに丸ちゃんと出会うまで知らなかった。
「もっかい言ってくれるかなて思ったんやけどな」
なんていたずらっぽく笑ってごめんごめん。と目を閉じる丸ちゃんの横に少しだけズレると、お尻に雪が当たる。
火照ったからだを冷やすにはちょうどいいくらいに冷たい雪に包まれると、なんだか現実じゃないみたい。
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櫻華(さくら)(プロフ) - さらさん» コメントありがとうございます!そう言ってくださると頑張って書いた甲斐があります(^^)応援もありがとうございます!ぜひ、楽しんでいただけたら嬉しいです! (2019年3月1日 22時) (レス) id: 04bcbb370b (このIDを非表示/違反報告)
さら - 読み終わって、本当に、本当に大好きな作品です!新作も頑張ってください!応援してます!(^○^) (2019年3月1日 21時) (レス) id: 774dc9dc2f (このIDを非表示/違反報告)
世現身(。。) - 櫻華(さくら)さん» はいw楽しみにしてますー。 (2019年1月19日 16時) (レス) id: 85930732e3 (このIDを非表示/違反報告)
櫻華(さくら)(プロフ) - 世現身(。。)さん» ありがとうございます!完結まで走り抜けますので、ぜひ楽しんで読んでいただけると嬉しいです(´˘`*) (2019年1月18日 17時) (レス) id: 04bcbb370b (このIDを非表示/違反報告)
世現身(。。) - 続編おめです!これからも応援します!!(。。)♭ グッ (2019年1月17日 21時) (レス) id: 85930732e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら | 作成日時:2019年1月14日 13時