及川徹の心の支え【及川徹】 (ページ17)

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貴方side

「及川さんに活を入れてください」

「はい？」

怪訝そうな顔をしている私に、センター分けの男の子は慌てたように言葉を足す

「Aさん、ですよね？俺、1年6組の国見です」

ご丁寧にクラスまで教えてくれた国見くん

本人も意図していなかったようで少し顔を赤くしていた

「ふふっ。…それよりどうして私の名前を？」

「俺中学北一だったので」

「なるほど。私の後輩でもあるわけだ」

２つ下の学年にも名前を知られていたことに少しびっくりしていれば改めて国見くんが話し始めた

「岩泉さんに、あなたを見つけたら及川さんのところに連れて行くよう言われてるんです」

「どうして？」

「及川さん、すごい不機嫌で」

大事な試合前に何やってんだあの子は…

「先輩には集中して試合に臨んでほしいんです。だからAさん、一緒に来てください」

真っ直ぐな視線をぶつけられてすぐに目を逸らす

「…ごめん、行けない。私が行ったら余計徹の邪魔になっちゃうと思うし」

「そんなわけないじゃないですか」

「あるよ」

「いえ、絶対にないです」

言い切る国見くん

「Aさんはもっと自分に自信持った方がいいです。あなたが思っているよりもずっと、及川さんにはあなたが必要です」

「自信持てるわけないよ。徹がね、私がいるの見たら集中できなかったって、言ったことあるんだよ。それなのに堂々と顔出せる？」

「………あの、それ絶対にそういう意味で言ったわけじゃないと思います」

　

心なしか、少し国見くんが呆れているような気がする

「岩泉さんに聞いたんですけどAさん、中学の時からずっと試合には見に来てるけど顔は絶対に見せなかったらしいですね。もしかしてそれって及川さんのその言葉が原因ですか？」

一はどこまで話したんだ

この後輩なんでも知ってるじゃないか

「まあそうだね。それが原因」

「なるほど、及川さんの自業自得だったってことか」

国見くんは一人で納得しちゃってるけど私には全然わかんない

それに初めて言葉を交わす後輩に何故ペラペラと誰にも言わなかった事を喋ってるんだ私。

「事情はよく分かりました。それじゃあ一緒に観客席行きましょうか」

「いや全然分かってなくない！？」