転校生・2の時間 * ページ42
湿気が漂うこの季節に雨特有の匂いとじめじめとした空気の中で木で作られているこの旧校舎は湿気がいつも以上に舞っている。
「はい、皆さん。HRを始めます」
((なんか大きいぞ……！))
その声の主はなぜだかいつもと様子が違うかった。とてもそれを見ていると違和感が残る。
［殺せんせー。33%程巨大化したその頭部についてご説明を］
律が言いたいことを言ってくれた。
「水分を吸ってふやけました。湿度が高いので。」
と言って顔を搾ってみせると水がでてきた。触手が水分を吸っていたらしい。殺せんせーの顔もいつも通りに戻ったところで本題に入る。
「さて、烏間先生から転校生が来ると言われていますね。」
「あー、まぁぶっちゃけ暗殺者だろうな。」
そう。前と同様にして転校生が来るのだ。ビッチ先生や律のこともあってかここまで来ると否定はできない。案の定暗殺者であろう。
「律さんの時は甘くみて痛い目を見ましたからね。先生も今回は油断しませんよ！いづれにせよ皆さんに仲間が増えることに楽しみなのは変わりませんねぇ。」
「ねぇ律。転校生のこと何かしらないの？同じ転校生暗殺者として。」
［はい。初期設定では彼と私と同時投入でした。私が遠くからの攻撃。彼が肉薄的な近接戦。ですが、ある二つの理由でそれはキャンセルされました。
一つ目の理由は彼の調整に時間が掛かったから。
二つ目は私の性能では彼の性能には力不足。彼よりも圧倒的に私が劣っていたから。］
彼ということは男の子なのだろう。しかし、殺せんせーの触手を破壊した律がその扱いとなればどれ程までに強いのか。今回の暗殺者は今までとは比べ物にならないのではと皆悟ったからだ。
湿った教室から扉の引く音が静かに聞こえた。
皆が一斉にして音の鳴った方向及び、教室の前の扉付近に目を向ける。そこにいたのは白い衣服を顔までも纏った人物がいた。
「あれが…転校生？」
皆が凝視するなか、その白い人物は右手から鳩を出した。手品だ。なんだなんだと思った生徒たちは肩の力が少し抜ける。
「あはは。驚かせちゃったね。転校生は私じゃないよ。私は保護者。まあ、白いし“シロ”とでも呼んでくれ。」
「いきなり白装飾で手品したらビビるよねー」
「うん殺せんせーでもなきゃ誰だって」
不思議な格好をしているけれどなかなかに優しい大人な口調に皆先程の緊張感はどこかへ行ってしまったように思う。因みに殺せんせーは吃驚したのか、奥の手の液状化を使っていた。
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作者名：綾鷹 | 作成日時：2022年8月25日 23時
