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美術室は程よく冷房が効いていて、少し身震いした。
座りなよ、とでも言うかのように不二先輩は美術室の椅子に腰掛けた。
落ち着いていられなくてその場に立ち尽くす。
先に口を開いたのは、不二先輩だった。
「随分夏になってきたね。」
「そう、ですね」
「受験が近付いてきて嫌になるなあ。」
「不二先輩。」
「部活ももうすぐ引退だから、頑張らなきゃ。」
「不二先輩…っ」
声を荒らげても、不二先輩は微動だにせず窓の外の景色を見ていた。
「越前の、夢を邪魔するのは許さないよ。」
知っていた、そんなこと。
知っていたことなのに、受け止めきれないのは何故なのか。
「知ってます。彼の側で、彼の夢を応援してきたつもりです。」
結局"つもり"だったのかもしれない。
"つもり"で、本当は、心のどこかで行かないでなんて思っていたのかもしれない。
「越前は、今頃飛行機に乗っているかな。」
思わずその場に座り込んだ。
全て、わかった。
彼が私の頬に温もりを残したことも、
彼が私の体を引き寄せたのも、
彼が私の顔を見て酷く優しく微笑んだことも、
彼が何かを言うことを躊躇ったことも、
全部、全部。
私は、我儘だった。
私は、図々しかった。
彼の一番は、"テニス"であって、私は彼の二番にも、三番にもなることができないただの"彼女"という存在だっただけなんだ。
「ど…して……っ、」
「Aちゃ、」
「どうして…突き放してくれなかったの…リョーマ…っ」
そんな事を言っても時間など戻らないし、彼本人に届くわけない。
それでも言わずにはいられなかった。
突き放してほしかった。
最後の最後まで瞳の中に私を映して、優しくして、抱きしめて。
感じた温もりが、まだ消えない。
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鄰 - とぉーーーーっても面白かったです！愛情の切なさが、ひしひしと伝わってくる作品でした。完結、おめでとうございます。 (2021年5月6日 1時) (
レス) id: 4fb606c628 (このIDを非表示/違反報告)
桜田 しおり(プロフ) - よさん» コメントありがとうございます！わああ、、具体的にありがとうございます（；；）これからも全力で書きたいものを書き続ける予定ですので、応援よろしくお願いします！ (2018年4月6日 21時) (レス) id: ef32a79d1d (このIDを非表示/違反報告)
よ(プロフ) - すごく面白かったです！一文一文が丁寧に書かれていて、なんていうか綺麗でした！！！！！！笑 これからも楽しみにしてます！ (2018年4月6日 21時) (レス) id: c452f86a4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜田 しおり | 作成日時：2018年4月3日 16時
