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司会者の合図でAは席を静かに立ち、スタッフから渡されたマイクを握る。
小さく深呼吸をしてカメラに微笑みを作る。
その微笑みが松田A始まりのサイン。
その微笑みが作られてからはその空間にいるものはAに釘付けになってしまう。
生バンドの前奏が流れ出す。
Aは優美に頭を下げて、左手でリズムを取った。
(すごい…これが、松田A……)
幸村も、釘付けになった一人だ。
Aの事は以前から耳にしてはいたものの、実際歌声を聞くのは今日が初めてだ。
電子機器から流れる歌声ではなく、直接耳に流れてくる歌声が初めてとは何とも贅沢なものだ、と幸村は頬を綻ばせた。
よく伸びる透き通った声がスタジオを包み込む。
Aの表情は直接見えないものの、モニターに映るAの表情は言葉に表せないくらい美しかった。
幸村の唾を飲み込む音が生々しく響いた気がした。
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Aは歌い終わるとゆっくり瞳を閉じ、長い睫毛を震わせた。
そしてまたカメラに微笑みを作り、頭を下げた。
鮮やかな臙脂色の振袖がライトに照らされてAの真っ白な絹のように美しい肌をより一層美しく見せ、どこか妖艶に輝かせていた。
薄い唇が微かに震えた。
(…緊張…してる……)
全国生放送だったり、大きな式典だったりで歌う事に慣れた訳では無いが当初よりは緊張しなくなっていた。
それなのに、元旦の収録の生バンドの生演奏でこんなに緊張するとはAは思わなかったのだ。
(慣れない振袖だったから緊張したのかしら、帯…きつかった…？)
帯に触れても、全く息苦しさを感じない。
振袖だからといって緊張する事も、無いに等しい。
Aは思わず眉をひそめた。
「どうしたのAちゃん、今日珍しく緊張してたね？」
「菊丸君…」
声が震えた訳では無い。表情が不安げに歪んだ訳でも無い。
いつもは溌剌として人々を勇気づける向日葵のような歌声を響かせているのに、今日の歌声はどこか揺れていて迷っているような、そんな歌声だった。
同業者の中でもずば抜けて耳が良い菊丸は、そんな微かな変化に気付いていた。
「Aさん」
菊丸の顔を困ったように眉を下げ見上げていたAは、後ろから届いた心地よいアルトトーンの声に振り向いた。
「幸村…さん…」
知ってるようで、知らない感情。
知りたいようで、知りたくない感情。
右手を握りしめた。
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桜田 しおり(プロフ) - も執筆中です。これからも桜田しおりをよろしくお願いします。 (2019年3月31日 0時) (
レス) id: ef32a79d1d (このIDを非表示/違反報告)
桜田 しおり(プロフ) - 更新停止という形で一時完結になります。また時間がありましたら、地道に更新していく予定ですのでどうぞよろしくお願いします。また時間がありましたら、中編レベルの作品も更新していく予定ですので、、そちらの方もよろしくお願いします。ただいま「我儘」という作品 (2019年3月31日 0時) (レス) id: ef32a79d1d (このIDを非表示/違反報告)
桜田 しおり(プロフ) - 一時更新停止という形でお休みさせていただきたいと思います。今作を楽しみにしてくださる方には大変申し訳ございません。ですが有難いことに私生活の方が多忙で、その多忙の中で書く作品は私も面白くないですしきっと皆様も面白くないと思うんです。ですので、今回は (2019年3月31日 0時) (レス) id: ef32a79d1d (このIDを非表示/違反報告)
桜田 しおり(プロフ) - コメントで失礼させていただきます。ラブソングを貴方に、を閲覧してくださった方本当にありがとうございます。作者の桜田しおりと申します。今作は思っていた以上に長く続く作品となりましたらいい。来年度からまたより一層忙しくなる事が予想されます。ですので今作は (2019年3月31日 0時) (レス) id: ef32a79d1d (このIDを非表示/違反報告)
桜田 しおり(プロフ) - 、さん» ありがとうございます！ご期待に添えるように頑張ります！応援よろしくお願いします。 (2018年12月29日 10時) (レス) id: ef32a79d1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桜田 しおり | 作成日時：2018年12月26日 0時
