56話 ページ9
｢…体術、能力は手加減できないから使わない。
正々堂々、訓練での成果で…
一番弱い剣術で相手してあげる｣
その言葉に、サカズキは眉間に皺を寄せた
｢なめよって…！！！！！｣
スラリと、ギルバートに部屋から持ってきてもらった愛刀を抜く
サカズキも既に真剣を用意をしていた。
｢…どうぞ、お先に｣
その言葉にキレたように、サカズキはAに襲い掛かった
刃が激しくぶつかった。
サカズキは、自分の剣が折られるまで、Aの姿を見ることが出来なかった
｢な？！
なん…っ｣
冷や汗を垂らしながら、Aと合った目が離せない。
一瞬の隙でも彼女はゆるしてくれないことを相手になっているサカズキは悟った
そして気づく
｢(所々にある傷跡は…海軍に所属してからのものか
赤子の時よりおると聞いちょったが…この数だと相当…)｣
分析をする余裕がどこにあるのか自分でも分からなかった。
Aの目はいつでも本気で、手加減してくれるとは到底思えない、
捕食者の目。
死を直感した、その時
サカズキの身体は傾き、床に背を打ち付ける
驚くまもなく、頬を彼女の剣が掠った。
冷や汗を増やしながら見上げれば、初めてまじまじと見る端麗な顔
｢はあ…危なかった…
良かった、当たらなくて｣
焦ったように笑う彼女は綺麗だった。
何歳年下だろうが、男がこの娘をみて頬を染めないことは無いだろう。
｢っ…、負け…か｣
震えながら起き上がると共にAも抱き上げ、膝に乗せる
その行動にAは疑問符を浮かべた。
｢…親が、誰だか知っているのか｣
｢…ええ、誰にも教えるつもりはないけどね。
…憎い、あの男を…私はこの手で捕まえる。｣
その睨みつけるような目を見て、サカズキはまたぞくっと少しの恐怖に震えた
｢そう、か…
………。
……すまんかったな。｣
｢…、普通、兵士はみんなそうよ
あなたにも持つ正義があるんでしょ？
…別に、間違っているとは思わない。｣
サカズキは最後にマシューとギルバートを一瞥してから、折れた刀を持って稽古場を後にした。
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作者名：ひはる x他1人 | 作成日時：2017年12月4日 21時
