53話 ページ6
動揺が半ば収まらない様子のセンさんと、それを面白がっている父さんを残し、私は自室へと戻った。
扉を閉じた瞬間…
｢｢お嬢！何ですあれ！！｣｣
｢そう来ると思った、ほら静かにして｣
後ろでうるさい２人に振り向き、腕を組んで睨む。
すぐに２人はピシッとした…が
｢何でうれしそうなの｣
｢｢いえ何も。｣｣
ーー稽古場
詳しく先ほどのことを説明すること(主にマシューに)10分
理解したらしい2人は改めて驚いていた。
｢…っ、ぜってぇ…俺はお嬢に試練になるような思いさせねえっす｣
｢私もです。
あなたを守り戦う、あなたの部下になった瞬間から、自分たちの使命はそう決まったんだ。｣
手を握られる。
その２人の手首に付けられている水晶がキラリと光った気がした
…ざわめくように視界が霞む
次の瞬間、激しい頭痛が襲ってきた。
｢っ！！！｣
ーー
赤い
目の前にいる男は、…女を抱きしめている
女の手には…赤ん坊が
ーー
……｢はあっ！っはあ、かっ…｣
視界が正常になると、先程見えたものが何だったのかうろ覚えになっていた。
見えるのは目の前に居る２人の心配そうな顔。
｢大丈夫すか？！｣
｢具合が悪いのですか？今日は稽古を止めにしては…｣
肩を借りながら立ち上がって、2人に笑顔を見せる
｢大丈夫。そんなのじゃないと思うから…
それに今日はまだあの舞を舞っていない｣
ピコん！と耳としっぽが生えたように反応する2人
｢うん、見たいのね…いいよ｣
稽古場の中央に立つ
髪を結んでいた紐を解きながら青いワンピースを揺らす
ーーーーーーーーー
その普通の仕草でさえ、部下２人を惹き付けるには充分なもの
俯いていたAが顔をあげた瞬間、彼女の右眼は光り、彼らの手首についているシーグラス…もとい水晶も輝き始めた
心做しか窓から吹く潮風も強くなる
心臓を掴まれたように彼女から目が離せない
流れる蒼髪から始まり、手先にしなやかな動きは移る
一転。後ろへ突き出した脚は力強く存在を示す
回り、跳び、全身を使って海を表現し、操る舞
暫く見とれていた２人は、ふと彼女が歌も歌っていることに気づいた
｢(舞と歌を組み合わせることで海はより確実に私と一体化する…と、母さんは教えてくれた
歌い手であった母さんのようには上手くはないだろうけど、少しは私も歌える)｣
彼女は、歌も上手かった。
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作者名：ひはる x他1人 | 作成日時：2017年12月4日 21時
