92話 ページ45
Aside
全てがスローモーションのように過ぎていく
ギチギチの包帯を引きちぎる音も
CPの焦り止める声も
剃と叫ぶ自分の声も
血の滲む間もなく、
私はその少年の元へ急いだのだ。
もう普通なら間に合わないほどの距離で、鉄球は少年の頭に迫っていた。
｢…！！ぁ｣
｢受水…っ！！｣
黒々した鉄球は間一髪、少年との間に滑り込んで発動した受水に飲み込まれてくれた。
｢うっ！！｣
｢…っ！！大丈夫？！！｣
飛び込む勢いで地面に擦りつけられた私を抱き上げてくれた少年の目は、
綺麗な 赤色だった。
｢…っ…｣
｢…っ
ありがとう…｣
何故？…
…その声を、私は知ってる。
ーーーーーーー
｢…！
すいません！！そこ誰かいませんでしたか！！｣
はっと赤色から目を離す
…
｢ここにいる！！気をつけなさいっ！！！！｣
｢あっ、す、すいませんっ！！
え、リラルド少…大佐？！！｣
｢ちょ、マシュー軍曹にギルバート軍曹どこへ！！！｣
｢…ぅ…ｯ｣
ドッと一気に背中が熱くなり血が滲み始めた。
｢あ…っ！！誰か！！｣
｢A様！！傷が開いた！｣
｢センゴク中将とガープ中将はまだか！！！｣
｢A！！！｣
あ、父さ…っ
引き離される金髪の少年。
｢…ぁ…
まっ…て…｣
駄目だ…暗く、なる…
ーーーーーーー…
…
『ちょっと！ロジャーさん…私は行かないって言ってるじゃないですか！海は嫌です、海には出ないって母と…
約束したんです』
『俺にゃあ行きたくねえようには見えねえな
歌い終わったおめえ、いつも海の方を向いてるぜ』
『…っ…ここで、つつましく…目立たないように生きるって…約束したんです。』
『俺を見ろ！！！
そんなにおめえを心配してるおめえの母親の願いはなんだ
幸せになってもらいてえんだろ？！
約束は大事さ、しあわせにならにゃならん
俺たちゃ明日ここを出てくんだぜ……セーラ』
『…っ、ロジャーさ』
『俺も約束しよう。
俺が、この世界に…名を轟かせ、お前を守れると証明できた時
…その時、まだ、おめえが俺を愛してたら、思いっきり歌え！俺に届くように！
そしたら…俺はお前を攫いに来る』
『っはい…』
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作者名：ひはる x他1人 | 作成日時：2017年12月4日 21時
