76話 ページ29
｢…ーーーっ！！感覚が！無くなる…！｣
…
…
……水滴がひとつ、水面に落ちた。
少しの恐怖に瞑っていた目を開ける
反射しきらめく、ゆらゆら揺れる光
すっと手で光を遮ろうとしても、手を透けて意味がなかった
｢…っ水、いや…なんで一面に海水が…
…ん？…！え？！！｣
手が透けた！！！！
よくよくみれば、それまで着ていた服はどこへやら
見たこともない衣装になって、何より大前提に、腕も足も、それにその衣装までもが透けていて、
衣装の裾から一面に広がる海と一体化していたのだ。
｢感覚がない…と言うよりは、海の流れだけ感じるようになった…？｣
酷い耳鳴りがする。
｢うっ！｣
《真の姿見せたる女神は、全て海となりける
依代は生けるものでありその他と同類
真の力は示せず朽ちる
依代の舞う時そなたは倒れ込む
しかし真の姿はそれを防ぐ》
っ！…今度は脳内に直接…
！それより、何？！
この姿であれば、舞でも、疲れないっていうの…？
《真の姿は巨大な力を与えたまう
海から海へ移ろうこと、舞うこと、
舞わずにすべての海を1度に扱うことも有り得る
ただし全てに使うべからず
真の姿は依代を眠らせる
強固な肉体あれば時は短し
虚弱であれば時は長し
今のそなたであれば、とびきりの能力のため半日程であろう
唱える言葉は『海の覇者』
そなたの意思に任せ…従おう》
…
…終わり、みたいね。
｢…
…いつしかの感覚が無くなる感じ、これの兆候だったんだ。
…海から海へ移ろう。
…海と知識があれば、世界中をワープできるってことね｣
まじまじと本当に海水で成形されている自身の姿を見回す。
｢…人間の体のままじゃ器がもろすぎて本当に備わっている巨大な力を扱えきれなかったというわけか
この姿を解けば眠ることとなる。
それが代償…
…より強くなれば、
いずれそのタイムリミットは短くなり…きっとゼロになることもありえる
なら、そうなるよりほかは無い｣
ーー
その後、2度目であるが舞をしてみた。
すると本当に疲れていなくて、模索中だった水の剣もしっかり形づけられた
この感覚を忘れずにいれば、きっと元の姿でも出せるようになる
なるほど。
…わくわくしてきた！！
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作者名：ひはる x他1人 | 作成日時：2017年12月4日 21時
