59話 ページ12
ぎゅっと手のひらに力を入れる。段々と汗ばんでくるのが分かった
｢…ぁ……そ、その｣
｢お？｣
姿勢を正して、ぐいっと袖でよだれを拭いたセンさん。
｢…そ、の！
おかきっていうのは結構太るらしいね。｣
｢えっ｣
私からは死角になっているが、きっと彼はおかきに手を伸ばそうとしたのだろう
…手の置き場を変えたのを私は見逃してない。
！そうじゃない！！！
｢だ、だから、その、！｣
｢…だから…？？…｣
｢と、っと…
お つ る さ ん は 元 気 で す か｣
｢ああ元気だ！相変わらず。呼んでこようか｢ごめんそうじゃないのっ！｣
む？｣
もじもじと手を後ろで組む私を見かねたのか、彼は立ち上がって、こちらへ向かってきた
｢……ゆっくりでいいぞ。いつまでも待っている｣
頭に置かれた大きな大きな手に安心して手を解く
…彼を呼ぼうとして……
息を吐くように流れ出た
｢父さま｣
｢え…｣
｢父さま、……って、呼んでいい？｣
…フリーズして面白い顔になっている
まあ、私もきっと顔が赤いだろうから人のこと言えない
｢え、な、急に｣
｢…私の父親はあなたと…父さん
父と呼んではいけないかな｣
くっと喉を鳴らした父さまは、にっこり笑って…
ーーああ、是非呼んでくれ、娘よ！
｢うん！父さま！｣
ー…
ガチャッ
｢うわっ｣
上の声はもちろん私である
その理由は言わずもがな
扉の前でしゃがみこんだ2人がつーっと一筋涙を眉間にしわ寄せて流していたからだ
…胸に手を当てて。
｢いえ、あまりにも美しい親子劇だと思いまして。｣
…そんな2人を一瞥して横を通り過ぎる
｢あっ、お嬢？｣
｢……泣くことだったの？｣
「！」
…なんで泣けるの？
私は自分が泣けることすら分からないのに
…別に羨ましくはないけど。
そんな軽く泣いて欲しくないだけだ。
立ち上がって私を見る２人
追いかけてきながら彼らははっきりと言う
｢…浮かれてすみません、軽いつもりはなかったのですが、易々とみせるものではありませんね｣
｢…心もっと鍛えマス！｣
立ち止まって…少し間を開ける。
二人に向き直って、ちょっと小っ恥ずかしくて斜め下を見る。
｢…でも、その
ありがとう
気付かされたのは、私もだ｣
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作者名：ひはる x他1人 | 作成日時：2017年12月4日 21時
