第212話 ページ29
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Aが住んでいるという部屋は、2DKの、独り暮らしをするには十分な広さだったが、6人ともなるとそうはいかない。かなり手狭に感じたが、彼女はおれ達が自分の目の届かない場所に行くことを強く拒絶した。
まだ姿を見られていない遠征艇待機の隊員には早急に帰還してほしいというのがAの希望だった。遠征中の判断はすべて指揮官である風間さんが判断することになっており、彼女は風間さんが納得する理由をこれでもかと挙げてみせたのだ。
何よりAはおれたちよりもはるかにこの世界のことを熟知している。何が危険で何が安全なのかもわからないから口の出しようがない。風間さんは最終的に冬島隊とオペレーター達を帰還させることに同意した。
通信を入れれば冬島隊は強く抗議したが、指揮官の命令となれば従うしかない。司令たちへの報告内容と伝達事項について話し、その約10分後に無事発進したとの連絡が入った。それを彼女に伝えれば、少しだけ安堵した顔をする。
「‥‥さて、それではこれからのことをお話ししようと思うんですが」
「その前に1つ確認しておきたい。我々が来たことを、この軍のトップは知っているのか？」
「報告書は出してあります。‥‥ので、おそらくかなり面倒なことにはなるかと」
「それは‥‥俺達が敵だと思われているということですか」
「敵‥‥とは、ちょっと違うかな。今のところ歌川達は軍に───人類に害を及ぼしてないから。
でもそのうち柊家から呼び出しはかかりますね」
「呼ばれて、どうなるんだ？」
「尋問ですね。軍は基本的に正体のわからない者に対しては排他的なので」
仕方ないことではあると思う。ウイルスとやらで人口が激減して、その残り少ない人間を脅かす吸血鬼。街を囲む高くて厚い壁は、この世界の砦だ。
「ここで過ごすにあたって絶対に守っていただきたいことは2つ。1つは、この部屋の外では絶対に気を緩めないこと。もう1つは、この組織の───日本帝鬼軍の人間を信用しないこと」
「‥‥誰も信じるな、ってことか？」
「はい。誰一人として信じないでください。軍内でも誰が味方で誰が敵か、私も完全に把握しきれていないので」
おそらくボーダーと同じように派閥が存在しているのだろう、と考えた。でもそれは多分、単にスタンスだけの問題ではない。そうでなければ彼女がこんなに釘を指すことはないはずだ。
この世界で、この組織で自分や仲間を守るために、彼女もきっと必死なのだ。
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夏向(プロフ) - るい酸性さん» 読み返していただきありがとうございます！6は現在改変中でして、土曜日中に全体公開する予定なのでもうしばらくお待ちください！ (2023年2月11日 0時) (
レス) id: b371f4960f (このIDを非表示/違反報告)
るい酸性(プロフ) - 久しぶりに読み返しました！6のパスワード教えて欲しいです！ (2023年2月10日 17時) (レス) @page49 id: 825df6404c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏向 | 作成日時：2017年9月7日 19時
