検索窓
今日:16 hit、昨日:59 hit、合計:84,804 hit

1枚のメモ(月島蛍) ページ47

「Aセンセイ」


私をそう呼んだのは1年4組でバレー部の月島くん。
私はバレー部でマネージャーをしていたため、彼は部活の後輩にもあたる。そして彼のお兄さんは私の先輩だ。

私は教育実習で母校である烏野高校に来ている。
すれ違う生徒はみんな私のことを先生と呼んでくれる。


『月島くん?』


私がそう言って振り返ると、持っていた沢山のノートのうちの数冊が落ちた。


「落ちるよって言おうとしただけデス」


そう言って月島くんは落ちたノートを拾ってくれた。


『ごめんね、私ドン臭くて…』

「そうですね」


月島くんは拾ったノートを私の抱えるノートの山の上に乗せ、その山ごと私から奪い取るように持った。


『ちょ、それ私持つから…!』

「また落ちたらどうするんですか」

『そ…それは……』


言葉は淡々としていて冷たいが、根はいい子だ。

どこまでですか、と問われ『実習生の控え室まで…』と答えると、彼は何も言わずに歩き出した。


『部活はどう?』

「別に、普通デス」

『でもバレー部良い雰囲気だよね。春高全国も夢じゃないかも』


私がそう言うと月島くんは黙ってしまった。
何か言ってはいけないことを言ってしまったのだろうか。


「……すよ…」

『え、今なんて…』

「行きますよ、全国」


そう言った彼の瞳は、熱い思いを秘めているように見えた。


『月島くん、バレーボール好きなんだね』

「は、何言ってるんですか…」


そんな話をしていると、目的地に到着してしまった。


『月島くんと話してるの結構楽しくて私好きだよ』


そう言ってノートを受け取ろうと手を伸ばすと、月島くんは丁寧に渡してくれた。


「別になんも楽しい話してなくないですか」

『それでも楽しいもんは楽しいの!』


そう言って笑ってみせると、月島くんは口を開いた。


「僕がAセンセイのこと好きだって言っても、同じこと言えますか?」


彼の言葉に思わず目を見開いて驚いてしまった。

「冗談」と言って背を向けた彼はひらりと手を振って歩いていってしまった。


「もう落とさないでよ」


と一言だけ残して。


ふと、1番上に乗っているノートが月島くんのものだと気がついた。

私は控え室に戻り、月島くんのノートを開く。

ひらりと1枚のメモが落ち、私はそれを手に取った。


【放課後、質問行ってもいいですか】


丁寧な字で書かれた一文。


【もちろん】


そう書いて私は再びノートに挟んだ。

最後だから(赤葦京治生誕記念)→←自惚れ(黒尾鉄朗生誕記念)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (90 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
136人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 短編集 , 恋愛   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

まる - 泡姫さん» お時間かかっても全然構いません…!!むしろリクエスト叶えていただけるだけですごく嬉しいです…!続編をお気に入り登録しておきます…!!!!!! (2月18日 15時) (レス) id: 649d507a41 (このIDを非表示/違反報告)
泡姫(プロフ) - まるさん» わー!リクエストありがとうございます!久しく書いていないため少しお時間頂いてしまうかもしれませんが、私なりに書かせていただきます!!現在こちらの作品は続編の方を更新する形になっておりますので、よろしければそちらをお気に入り登録してお待ちください! (2月18日 12時) (レス) id: 5951de0be4 (このIDを非表示/違反報告)
まる - 作者さんにリクエストが…。銀.島.結.で過去の辛かったことを銀が全部包み込む…みたいなお話を書けたりしますでしょうか…?(語彙力なくてすみません…) (2月18日 11時) (レス) id: 649d507a41 (このIDを非表示/違反報告)
オレンジさん - 好きで愛してるわ作者さんじゃなくてさ、作者様じゃね?(は?何言ってやがるオレンジさんや) (2022年7月10日 21時) (レス) @page48 id: 0e3c42be20 (このIDを非表示/違反報告)
泡姫(プロフ) - 愛菜さん» そういう素直で分かりやすいお言葉が1番嬉しかったりします……今後も緩く書いていきますので時々キュンとしに来てください…!(ちなみに現在次話執筆中です…) (2021年11月6日 11時) (レス) id: 8284d2d1b5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:泡姫 | 作成日時:2021年9月1日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。