いち ページ1
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その日の依頼は至極簡単なものだった。
そのため、入社試験に合格したばかりの私一人に案件を任され、難なく無事に終了し帰社する前に少しだけ海が見渡せるベンチに腰を掛けていた。時刻は三時を過ぎた頃。夕方迄に帰って来いと云われていたのでまだ余裕がある。
眩い太陽の光が水面に反射し煌めいていた。私がいるベンチの近くには簡易遊具が在り、小学生程の子供達が笑顔で走り回っている。何処か近くで配っていたのだろう、殆どの子供は手に色とりどりの風船を持っていた。
「あっ!」
一人の少女がぱ、と誤って離してしまい風船は持ち主の手を離れ上昇し木に引っ掛かってしまった。途端泣き出してしまった少女だが周りの子供達は既に園外へ行っていて少女の不幸に気付いていない。それどころか姿が見えなくなりそうだ。
少女は風船を取ろうとするが届く筈も無く仕方なく他の子供達を追って駆け出した。
私は一気に人気の無くなった此の場で周りに誰もいない事を確認してベンチから立ち上がり、小さく呟く。
「異能力__『夜叉白雪』」
「ありがとうっ、お姉ちゃん!」
ばいばい、と大きく手を振る笑顔の少女に私は微笑んで振り返す。あの後、最近制御出来る様に成ってきた夜叉白雪を呼び出し風船を取ってもらったのだ。少女を追いかけ風船を手渡すと目を見開いて、然して満面の笑みを浮かべてお礼を云われた。悪くない気分だ。それどころか、胸が温かく成った気さえする。
さあ、そろそろ戻らないと。
脳内に叩き込まれた地図によると探偵社は此方だ。胸元にぶら下がる折り畳み式携帯電話は一歩進む毎にたん、たん、とバウンドをする。上機嫌だった私は、珍しく気が緩んでいた。
「Hey girl!」
「!」
「Can I ask you something?」
「えっ…と、」
私の名は泉鏡花、齢は14。好きな物は豆腐と兎。嫌いな物は犬と雷とお化け。少し前までマフィアに居たけど今は武装探偵社に所属している。
英語は、判らない。
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粋(プロフ) - とても面白いです!続き気になります!更新頑張ってください! (2018年7月1日 18時) (レス) id: 232d77c3ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:緑猫 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=92287f70ddf83f82a39ea7c9d0c473c7...
作成日時:2018年6月10日 23時