Episode5 ページ7
部活がない日の放課後は暇だ。
真っ直ぐ家に帰っても兄と2人きりになって気まずいし、かと言って一緒に寄り道するような友達も存在しない。
1人で寄り道するのは学校近辺だと同校生多くて難易度高いし、結局ある程度の時間になるまで教室で時間を潰すようになってしまう。
「あっれれ、何してんの」
教室に1人で残る私に声をかけてきたのは花巻だった。
「兄の方は？」
『はじめくんと帰ったよ』
「で、お前は？」
特に何もしていなかった私は黙ってしまった。
課題してた、とでも言えばよかっただろうか。でも机の上は見事に何も無い。簡単に嘘だとわかってしまうだろう。
「まあいいけどさ、」
花巻はそう言いながら私の前の座席に座って私の方を向いた。
『何しに来たの？』
「別に？委員で残ってて帰ろうとしたらお前いたから声掛けただけ」
『じゃあ帰ればよくない？』
「ひとりじゃ暇だろうし俺が相手してやるっつってんの」
そう言いながら花巻は携帯の画面に指を滑らせていた。ゲームをしているのか、はたまた誰かに連絡しているのか分からないが、私も携帯の画面に目を向けた。
誰からも連絡が来ないこの携帯に果たして意味があるのだろうか、なんてことを考えた。
「お前及川のせいでバレー辞めたの？」
『なんで…』
その話は国見と私の2人でしか話していない。なぜ花巻が知っているんだ、と思い言葉に詰まっていると、花巻が再び口を開いた。
「昼休みに国見と話してたろ、旧校舎の方の階段で」
きっと今の私はすごく驚いた表情をしているだろう。あそこは普段誰も近付かないはずだから。
「たまたま向こうの棟に忘れモンしてて取りに行ったら聞こえちゃった」
てへ、と笑う花巻は別に可愛くない。
しかしお昼休みにあんなところに来る奴が国見以外にも居たのか。今後は気を付けないとな。
よく考えたら、なぜ国見もあんな所にいたのか分からないままだった。
『あっそ……』
「その態度はホントなんだな」
花巻は変なところで勘が鋭い。これまでも何度か嫌なところを突っ込まれてきた。
「俺がバレー部誘ったときどんな気持ちだったんだよ」
『別に。バレーは嫌いじゃないし、マネージャーくらいならって思ってたよ』
「ふぅん…」
花巻はどこか納得のいっていない様子だったけれど、私はしっかり事実を述べたから納得して貰わなければ困る。
「お前、及川に嫉妬したんだろ」
心が強く揺さぶられたような気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：泡姫 | 作成日時：2024年2月26日 17時
