Episode9 ページ11
私たちは羨んでいたんだ。
お互いにお互いを。
それに気付かず長い時間が過ぎてしまった。
『ねぇ、徹』
「なぁに」
徹は優しい声で答えた。
私は向かいに座る徹の隣に移動した。
『私たち、あの頃みたいに戻れるかな』
「戻るんじゃない、なるんだよ。あの頃みたいに、良く似た仲のいい双子に、またなるの」
隣合って座った布団から見えたのは、幼い頃の私たちの写真だった。
『その写真、ずっと飾ってたんだ』
「そりゃあね。大事なものだから」
徹の肩に寄りかかる。
いつの間にこんなに大きくなっていたのだろう。
昔は同じくらいの背丈で、私が大きい時もあったはずなのに。気付かない間にこんなに差がついてしまった。
『私、髪切るよ』
「勿体ない、どうして？」
『この髪は……』
雪解けしたら切ると決めていたから。
『なんとなくだよ。徹も短いの可愛かったって言ってたでしょ。久々にショートの私も見たいんじゃないかと思って』
「確かに、ちょっと見たいかも」
徹は少し赤くなった目を細めて笑った。
「ねぇ、A」
『ん、なぁに』
「俺、Aと双子で生まれてこれて幸せだよ。Aが居ると、俺は1人じゃないって思える」
『私も、』
私も、徹が居てくれて幸せだ。
『双子で居てくれてありがとう』
私たちふたりは今までも、もちろんこれからもずっとこの先双子で、誰かがそれを崩すことは出来なくて、たとえ私たちのどちらかが拒んだとしても離れることは出来ないと思う。
けれど私たちはそれを自ら望んだ。
それでいい、そうであって欲しいと。
『私たち、よく似てるんだよね』
「高校生にもなればだいぶ変わるけどね」
『でもほら、手のバランスとか、等身とか、プレーとか』
「確かに、その辺は結構似てるかも」
2人で手を伸ばして見比べる。
あぁ、なんだかあの頃に戻ったような感覚がする。
『実はね、花巻が私の背中押してくれたの』
「あのマッキーが…！？」
『あのって酷いな〜！あいつ結構良い奴だよ！』
「良い奴なのは分かってるけどさ〜！」
こんなことで笑い合えるんだ。
抜けた3年間はもうここにはない。
私たちなら、もう大丈夫。
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作者名：泡姫 | 作成日時：2024年2月26日 17時
