Episode0 ページ2
私たち双子はよく似た兄妹だったと思う。
顔は小さな頃からそっくりで、手足が長いのも似ている。
2人ともスポーツは好きで、特にバレーが好きだった。
希望したポジションも同じで、プレーやフォームもよく似ていた。
幼馴染のはじめくんに怒られるのも一緒で、母に怒られるのもまた一緒だった。
生まれた時からずっと一緒で、これからもずっと一緒だと思ってた。
けれどそれは違った。
中学2年の冬、私は怪我をした。
コーチには最後の大会は間に合わないと言われた。
病院の先生には頑張れば夏には治ると言われた。
私は必死にリハビリをした。
中学3年の最後の大会。
私は怪我を治して出場した。
けれど結果は散々なものだった。
兄はその大会でベストセッター賞を取った。
兄は私よりずっと先に居るのだと改めて感じた。
兄が自主練を欠かさず、家でも頑張っていたのは知っていた。この瞬間それが認められたのだ。
けれど私は心の底から喜べなかった。
兄の笑顔が憎かった。
『私もう、バレー辞める』
「な、なんで…」
『使えない駒はどこも求めてないから』
ゴミ箱の中のシューズを眺めた。
本当は兄に負けたのが悔しいだけだったのに。
「Aは、バレーが嫌いになったの？」
『そう、嫌いになったの』
絶望する兄の顔を、私は見ない振りをした。
ー
「A……ちょっと、A？」
『あぁごめん！なんだっけ？』
「もう、ちゃんと聞いてよね！」
なんの間違いか、私は兄と同じ青葉城西高校に入り、バレー部に入った。選手ではなく、マネージャーとして。
兄に対する劣等感は消えない。
兄が進化していく姿を日々見届けることは、私にとって苦行でしか無かった。
あの日のことはまるで無かったかのように接する兄に、僅かな差を感じた。私はあの日のことを引っ張り続けているのに、兄は上手に忘れられている。羨ましさすら感じた。
私たちの差は埋まらないまま、広がっていく一方だった。
バレー部に入ったのは兄の誘いではない。
同級生の花巻に誘われたのがきっかけだった。
兄とは決して仲が悪いわけでは無いが、花巻に兄には内緒にしておいてと口止めされた。
何ひとつ聞かされていなかった兄は、仮入部の日に心底驚いた表情をしていた。あの表情は忘れられない。
「A……なんで…」
『花巻に誘われたの！マネージャー居なくて困ってるって！』
バレーボールは、嫌いじゃないから。
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作者名：泡姫 | 作成日時：2024年2月26日 17時
