苦い【7】 ページ8
今日は灰羽くんに会えると思ってたのに、なんで熱なんか出るかなぁ…。
それに、お店に優生のノート忘れてきちゃったっぽいから取りにも行きたかった。
でも昨日逃げちゃったから気まずいし、会えなくてよかったかもしれない。
「A、入るわね」
『お母さん、どうしたの？』
「同じクラスの…芝山くん？がお見舞い来てくれてて、あなたと直接話したいそうなの。いいかしら？」
『優生が？まぁうん、平気だよ』
そう言うとお母さんは軽く頷いて部屋を出ていった。私は起き上がり、髪ゴムを手に取った。
少ししてドアをノックされた。
私は「どうぞ」と髪を結きながら返した。
「し、失礼します！」
そう言って入ってきたのは優生じゃなかった。
『なんで、ここに…』
「なんでって、お見舞い！」
灰羽くんは私の部屋に入り、ベッドの傍に座った。
「体調大丈夫？昨日雨平気だった？」
灰羽くんはそう問いかけながら持ってきたビニール袋からゼリーやスポーツドリンクを出していく。
私は彼の言葉に頷くことしか出来ず、とにかくテンパっていた。
『てか優生は…？』
「それ俺が名前借りただけ！」
へへ、といたずらっ子のように笑う灰羽くんはとても可愛く見えた。
「あとこれ、プリントと本物の芝山からのノート！」
そう言って差し出されたものを私は手を震わせながら受け取った。緊張していたのだ。
「まだ体調良くならない？」
灰羽くんは私の顔を覗いてきた。
『平気だよ！それにしても、なんで灰羽くんが来てくれたの…？』
「それは…確認したいことがあったから」
灰羽くんの表情を見て、私は昨日のことだろうと思った。昨日偶然制服姿で会ってしまったわけだし。
「夏目さんって…」
『うん…』
「学年1位なの！？」
『えっ？』
予想していた方向とは違った質問で少し驚いてしまった。
ーー
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作者名：泡姫 | 作成日時：2021年9月8日 20時
