甘い【6】 ページ7
朝練が終わり、部室で制服に着替えていた。
「あ、そーいえばはい!これ!」
「えっ、なんでこれを灰羽くんが…?」
「昨日店に来てた近所の子が落としてったぽくて、とりあえず芝山に返しておく!」
そう言ってノートを返した。
「そっか、だから昨日夏目さんのことを聞いてきたのか…」
「芝山って夏目さんと仲良いの?」
「仲良いのかは分かんないけど、隣の席だしよく話すよ!」
「ふーん…」
その日、彼女は学校を休んでいた。
芝山によれば、どうやら風邪を引いたらしい。
昨日雨の中を傘もささずに走っていったからだろうか。だとしたら俺のせいかもしれない。
「芝山、夏目さんとこにプリント届けるって言ってたよな!?」
「あ、あぁ、うん。行くつもりだよ」
「それ、俺に行かせて!」
もしかしたら彼女に会えるかもしれないと思った。
俺は芝山からプリントやノート、彼女の家までの簡単な地図を預かり、カバンにしまった。
「お先に失礼します!!!」
と先輩達に言って部室を出て、走った。
昨日の彼女のように、とにかく走った。
彼女はうちの近所らしいから、うちの方に行けばいいととりあえず走り、近くになってから地図を出した。
途中のコンビニで風邪引いた時に良さそうなゼリーやスポーツドリンクをいくつか買った。
「ここ、か…」
彼女の家は本当に近所で、うちから10分くらいのところだった。表札にはちゃんと「夏目」と書かれており、地図の場所も間違いなさそうだった。
インターホンを押すと出てきたのは綺麗な奥さん。きっと彼女のお母さんだろう。
「いきなりすんません!俺、夏目さんのクラスの芝山っていいます!夏目さんのプリント持ってきたんすけど!」
「あら、そう…よかったら上がってちょうだい」
芝山すまん…今だけ名前を貸してくれ…。
彼女のお母さんの言うままに家にお邪魔した。
ーー
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作者名:泡姫 | 作成日時:2021年9月8日 20時