甘い【1】 ページ2
突然だけど俺は片想いをしている。
相手はよくうちの店に来る同い年くらいの女の子。
うちは家族経営でケーキ屋をやっていて、たまに店番を頼まれる。
彼女はよく俺が店番してる時間に来る。
母ちゃんに聞いたら定休日以外毎日来てるらしい。
いつもあの子はマカロンを買って、店内にある席で食べて帰る。
物凄く幸せそうな表情で。
１度話しかけてみたい。
「そんなにマカロン好きなの？」って一言でもいい。
今日もあの子は来ていた。
「あ、」
言いかけた言葉は今日も逃げていき、声をかけるタイミングを見失ってしまった。
きっかけはあるはずなのに言えないとか、ただのビビりじゃん俺。
一言声掛けるだけってミッションもクリア出来ない。こんなんだからレシーブも上手くならないのか？
いつか彼女と話せるように、いつも店に出る前に俺は鏡に向かって、
「こんにちはっ！！」
「リエーフ、またそれやってるの？」
「い、いいだろ！！！」
こんにちはと大きな声で挨拶する。
彼女に話しかける時の練習。
いつでもあの子に声を掛けられるように、失敗しないように。
そして明日は店の定休日。また明後日は部活が遅い日。
だから彼女とは2日間会えなくなってしまう。
あの子はいつも私服だから学校は分からないし、名前も聞けるはずがない。
でももしこの近所に住んでるのなら、あの子もきっと音駒だろう。話しかけられたら聞きたい。
でも音駒ならすれ違ったことくらいあるんじゃないか？会ったことないし、きっと違う学校なんだろうな。
年下の可能性もあるし、大学生の可能性もある。
どれもこれも話せれば分かるはず。早く彼女のことを知りたい。話し掛けたい…。
「リエーフ！お買い物行ってくるからお店番よろしくね！」
「いってらっしゃい！！」
母ちゃんはそう言って買い物に出かけて行った。
あれ、そうすると今この店には俺とあの子しか居ない…？
これってもしかしてチャンスってやつなのでは！？
でも、睡魔が………。
ーー
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作者名：泡姫 | 作成日時：2021年9月8日 20時
