56話 ページ7
＊
｢すみません、１つだけいいですか。｣
何も喋らなかったAが漸く口を開いたことで記者たちは聞き漏らすまいとよりいっそうマイクを向けた。野次馬たちもなんだなんだとスマホを向ける。Aの隣で天喰が失神しかけていた。
｢まだまだヒヨっ子の、それも学生の身であるおれが言っても響かないかもしれないですけど、言わせてください。｣
Aの顔はいつもの無表情だった。
｢おれたちはヒーローです。守るべきもののために、個性を使用している。守りたいものがあるんだ。ただ、おれらは人間だからどれだけ頑張っても限度っつーもんがある。だから、｣
いつの間にか周りは静寂に満ちていた。Aの声だけが聞こえる。
｢危ないときは、次は自分かもしれないって、自覚を持って欲しい。｣
それは野次馬たちに、どこまでも追いかけてくるマスコミたちに対する願いだった。
オールマイトやエンデヴァー、ホークスたちのように、敵と戦いながら確実に市民の安全を約束できるほどAは強くない。今回、死者は出なかったものの数人の軽い怪我人はいるし、ヒーロー側だってAなど怪我をした者もいる。プロはいつだって命がけ、なんてどこかのNO.1ヒーローが言っていたがまさにその通りだとAは思った。
お願いします、と頭を下げたAに天喰は｢お願いします。｣と少し遅れて頭を下げる。Aが驚いたように目だけ天喰へ向けたのに気付き、同じようにAに目を向けた。目が合ったが何も言わずに逸らされた天喰は、改めてAは凄いと感じていた。
普段からどこかマスコミを嫌うような素振りを見せていたAを、天喰は単にマスコミが苦手なだけだと思っていた。機械のように同じ言葉を繰り返し言いながらマイクを向けてくる姿は、家でテレビを見ているだけでは気付きもしない社会の闇を見たような気がする。だからか、と思っていたのだが実際はそうではなかった。
Aは危険を自覚しないその行動が嫌いだったのだ。
それに気付いた天喰は、我に返ればAと同じように頭を下げていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 695人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
緑猫 - 紅月さん» ご指摘ありがとうございます！勘違いしてました…直しておきます！とても助かりました！！ (2020年2月1日 18時) (
レス) id: 609bae11e2 (このIDを非表示/違反報告)
紅月(プロフ) - 92話で、ねじれちゃんのクラス間違ってます！！3年A組ですよ！あと、お話とても面白いです！！ (2020年1月31日 12時) (レス) id: 70aadd4360 (このIDを非表示/違反報告)
(o^^o)ピコ(o^^o)(プロフ) - 緑猫さん» お返事ありがとうございます。分かりました!楽しみにしながら待っときますね!更新頑張ってくださいね (2020年1月1日 0時) (レス) id: 446dbb4469 (このIDを非表示/違反報告)
緑猫 - (o^^o)ピコ(o^^o)さん» コメントありがとうございます！99話まで解禁した後に全体公開をする予定ですのでもう暫くお待ち下さい！ (2019年12月31日 22時) (レス) id: 609bae11e2 (このIDを非表示/違反報告)
(o^^o)ピコ(o^^o)(プロフ) - コメント失礼します！前からこの小説お気に入りで、いつもワクワクしながら読ませていただいてます！ 続編のパスワードを教えて頂けませんか？宜しくお願いします。 (2019年12月31日 20時) (レス) id: bae95daf70 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：緑猫 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?
作成日時：2019年5月12日 19時
