"俺を好きになって"なんて言わせない。 (ページ7)

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watanabe side

翔「…は？誰？」

「…そっちこそ」

初めて会った印象は最悪だった。
確かあれはSnowManが出来た頃。
珍しく早起きして稽古場に向かったあの日。

ドアを開けたら知らない女がいた。

翔「…ここ、俺らが使う予定なんだけど」

「…こっちもここで練習しろって言われてるんだけど」

‥.いや，だから誰だよって。
そう言おうと思ったら，その女はまた鏡に向き直して踊り始めた。

なんとなく居づらくて、なんで俺がなんて思いながら
隅の方に荷物を置いて携帯の画面を見つめる。
流れてくる音楽は、ジャニーズの先輩の曲ばかりで。

…こいつ、ほんと誰？
と横目で見つめていた。

「…じろじろ見ないでもらってもいい？」

翔「…わり、」

めんどくさそうに俺にそう呟いて、
また鏡に向き直して踊り始める。

「わっ…」

それからしばらくして、聞こえてきた声に顔を上げる。
さっきまで響いていた靴の音が止まって，
その代わりに地面に座り込んでいるのが見えた。

翔「…何してんの，」

「…転んだだけだから」

翔「どうしたらそんな転び方するんだよ」

そう声をかけたら，その女は悔しそうに呟いた。

「…バク転を1週間でできるようになれって言われて」

翔「…は？」

1週間でバク転なんてできるわけがない、
俺らだって何ヶ月も練習したんだから、
そう言おうとしたけど、やめた。

だって今にも泣きそうな顔でまたそいつが立ち上がったから。