壁の向こう側【rtrt】

39話 ページ39

あの事件の日、レトさんは真っ先に私を助けようと1人であいつをぶん殴ったらしい。
｢なにすんだって言いたいのはこっちだ｣とガッチさんと警察に死ぬほど怒られたんだとか。



もちろん、あいつの馬鹿みたいな嘘話を鵜呑みにして1人で行動した私も死ぬほど怒られている。
今ではもうすっかり笑い話だ。




でも、そんな彼のおかげで今の私がいる。
ちょっと泣き虫だけど、何かあればすぐ飛んできて、守ってくれる。私の全てを受け入れてこうしてそばに居てくれる。






「今度さ、あのゲームやらない？」

「あー忘れてたね、クリアできるかなあ」

「大丈夫！2人でやれば勝てる！｣





私はもう1人じゃない。
ガッチさんがいて、キヨくんとうっしーがいて、レトさんが隣で笑ってる。






「レトさんレトさん｣

「ん？｣

「ありがとう、私を好きになってくれて｣







それだけでこれから先何があっても乗り越えていける。






「こちらこそ、俺を選んでくれてありがとう｣





あんなに五月蝿かった蝉の声がいつの間にか聞こえなくなっていた。
切なさを含んだそよ風が彼の少し伸びた前髪を靡かせた。見え隠れする優しい瞳はずっと私を捉えている。







ああ、やっと。








「大好き｣








私の長い長い夏が、終わりを迎えた。





end

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