16話 ページ16
お互いに誤解も解けて、彼と話す手段としては私が慣れるまでまずは筆談からという事になった。
問題は場所だ。ガッチさんに相談すると「このまま俺の家でやればいいんじゃないの?」と当たり前のように言われたのでなにも言えなくなった。
ガッチさんの心の広さが少し怖くなった瞬間だった。
レトルトさんは「ガッチさんがいた方が安心でしょ?」とすんなりOKしてくれたのでここはお言葉に甘えて2人でガッチさん宅に通う事になった。
アイスを買ってきたり好きなお菓子を交換したりと、だいぶこの関係に慣れてきた頃だった。
彼が小さく声に出しながら文字を書いているのに気がついた。
これじゃ何書いてるかわかるよ、と笑うと少し余裕がでてきたのが分かったのか、彼にとうとう声を出してもいいかと聞かれた。
文字には限界があるのは私も薄々気づいていた。
「だめ、かな」
遠慮がちな声が壁越しに聞こえる。
どくどくと心拍数と体温が上がっていく。
以前の私ならここで耳を塞いで拒絶していたが、今は彼の声を聞いても不思議といけるような気がした。
――――――――――――――――――
「だめ、かな」
彼女との筆談がピタリと止まる。
リビングのドアから顔をのぞかせたガッチさんが冷や冷やしながらこちらを見るものだから俺も固唾を飲んで返事を待つ。
シーン…
向こうからは何も聞こえない。書く音さえも。
またやってしまったかとペンを持つと
「あの…レトさん、て関西の人…?」
とか細い声が返ってきた。
俺はガッチさんに会話を聞くな!とシッシッと手を払うとこれまた嬉しそうに親指を立ててリビングへと入っていった。
「わかる?結構標準語に慣れたと思ってたんだけど」
「う、うん。イントネーションが…たまに違う」
「そ、か…俺もまだまだってことやね」
「ふふ、本物の関西弁だ」
お互いの声に緊張が混じっている。
甘酸っぱい時間がなんだかくすぐったい。
筆談の時ほどスラスラと会話は続かなかったがそれでも彼女の声が聞けた事がたまらなく嬉しかった。
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シノノメ。(プロフ) - 遊ちゃん_SKZさん» 返信遅くなりました申し訳ありません!!他の作品も呼んでくださったのですね!!ありがとうございますわああああああああ!!がんばりまああああす!!! (2022年11月21日 15時) (レス) id: 013d671d7d (このIDを非表示/違反報告)
遊ちゃん_SKZ(プロフ) - ぶっ通しで読んじゃいました、、他の作品もこの作品も本当最高だ.....これからも超応援してます!!!!!!好きだああああああああ!!!(煩) (2022年10月31日 6時) (レス) @page40 id: fe8355afed (このIDを非表示/違反報告)
シノノメ。(プロフ) - ういろさん» ハッピーエンドに出来て良かったです!こちらの作品も読んでくださったのですね!ありがとうございます( ´•̥ו̥` ) (2022年9月28日 3時) (レス) id: d09763f888 (このIDを非表示/違反報告)
ういろ(プロフ) - 主人公の女の子が幸せになれてよかった(´;ω;`)泣いちゃいました!! (2022年9月28日 2時) (レス) @page40 id: c9d9bd71e7 (このIDを非表示/違反報告)
シノノメ。(プロフ) - 澪さん» 最後まで!本当にありがとうございます( ;ᯅ; )他の作品も頑張りますのでよろしくお願いします!! (2022年9月26日 22時) (レス) id: d09763f888 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シノノメ。 | 作成日時:2022年7月6日 2時