【d!】悪役の戯言 (ページ5)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:3,527 hit

4 ページ5

部屋へと戻るために長い廊下を独り言を呟きながら歩いていると、低い声の持ち主が私の独り言に反応した。振り返るとご本人様登場。

『あっひっ、グルッペンさ…』

gr「こんな真夜中に俺に会って一体なにをするんだ？まさか夜這いか？」

推しに夜這い？ありだな。確かにもう真夜中を回っている。しかしこんな時間に歩き回っているのはグルッペンも同じであろう。確かグルッペンはこの国家の最高指導者。下手に回るのが妥当だろう。

『そんな夜這いなんてしないですよ。夜風に当たっていただけです。総統様はどうしてこの時間に出歩いているのですか？』

gr「…ふむ、鬱先生が言っていたのは本当のようだな……なんだ、体調が悪いらしいじゃないか」

『いえ全く』

gr「じゃあなんだ、また金か？お前には腐るほど与えてるだろう？」

なるほど、普段の悪役である私の態度が違うから困惑しているのか。そりゃそうだ、設定されているはずの性格とは全く違うんだから。

しかしこの悪役はどれだけ性格が悪いんだ！ただ敬意を示しただけで金を欲していると思われるなんて…。こんなイケメン達と生活出来るなら金なんて要らなかろう！

『お金はもう要らないです。生活させてもらっているだけで十分なんで。』

gr「なんだと！お前からそんな言葉が出るなんて…やはり医者を呼ぶべきか」

対応するのが面倒くさくなり私は医者を呼ぼうとするグルッペンを無視してさっさと部屋へ戻った。

無駄に大きなベッドへダイブし、瞼を閉じる。

起きたら元の世界に戻っていないだろうか、儚い希望を胸に静かに眠りについた。

＿＿＿＿＿

目を覚ますといつもの天井に朝の眩しい光！とはならず金髪眼鏡の美形が私の顔をまじまじと眺めていた。

そこで私は死を悟った。もしや深夜に出会った時に無礼を働いたのだろうか、話の途中で面倒くさくなって逃げたことだろうか？それとも鬱先生に扉をぶつけたことだろうか？

昨日1日だけ、なんなら数時間しかこの世界にいなかったのにもう死ぬのだろうか。

いや、ここはゲームの世界だ。死んでしまえばコンテニューが出来るのではないか？と考えていると、

gr「おい、A、起きてるんだろ。なに狸寝入りなんてしているんだ？」

『お願いします。できるだけ苦しまない方法で殺してください…』

gr「別に殺しはしないぞ。診察はするけどな。」

お祈りを続けながら薄らと目を開いて視線をグルッペンから右へとずらすと白衣を着た小太りの中年が立っていた。