__鶴姫__2【ツルネ】

73射＊好きだから ページ27

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鳴宮 湊side





弓具を持ち、道場の壁沿いを歩いていると、目の前に愁がいた。








愁「湊、俺はもっと高みが見たいんだ。一人じゃたどり着けない。


湊が必要なんだ。俺と同じ高みに上れる可能性があるお前が。





だから早く、もう一度上ってきてくれ。
お前は不意に現れて、俺の人生を変えたんだ。

その責任はとってもらう」









言うことだけ言った愁が俺に背を向ける。


その背に俺は、自分も愁に言いたいことを言った。







湊「県大会本戦で、そこでもう一度今の俺にできる最高の射を見せるよ」







俺の言葉に足を止め、愁は振り返ることなく








愁「期待している。





そうだ、湊」






湊「？」









愁「お前は滝川 Aが好きか？」





…え？









愁「鶴姫としての彼女でも、弓引きとしての彼女でもない。ましてや友人としてでもない。


異性として好きか、てこと」






湊「え…！？///」






異性…Aのことを女の子として好きか…って？









湊「……愁は」









愁「_____俺は好きだよ」







湊「！」









愁「だから…例え湊でも、この気持ちだけは譲れないし、湊にも渡さない」








振り返り紫色の瞳が俺を捕らえた。
俺は目を背けられなかった。








湊「……」







今、わかった…




いや、わかっていたんだ。







俺自身もAに惹かれている。


愁もAに惹かれていたんだ。








気づかぬうちに、密かに…好意を寄せた。









湊「俺も……Aのことが好きだ。愁には譲れない」






俺の返答に満足したのか、フッと口角を上げて笑う。そして愁は今度こそ振り返らず、歩みはじめた。




愁とは反対方向に、俺も歩き出す。





いざ言葉にしてみれば、恥ずかしいような感じだった。




けど、スッキリした。



愁の前だったからかな？

愁と同じ気持ちだったからかな？






Aのことが好きだから_____







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