34☆アレスシステム ページ36
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_________王帝月ノ宮スタジアム
貴「……」
野「……
…………言いたいことはわかるよ」
帰ってきてから、Aは野坂を問い詰めるようにジッと見る。Aの視線に負けた野坂。
野「君が聞きたいのは『アレスの天秤』のことでしょ？この間からずっと気になっているみたいだからね……
いいよ、教えてあげる」
場所を移そう、と野坂はAを選手宿舎に連れていった。
自室に連れてきた野坂はAをベッドに座らせ、自分は勉強机の椅子に座る。
野「…何から話そう」
貴「……」
野「まず…『アレスの天秤』だ。
電機メーカー「月光エレクトロニクス」が開発した新世代教育プログラム。
幼少期から遺伝子レベルを分析することで、スーパーコンピュータ「AR2000」による最適なプログラムを提案してから英才教育を受ける。
この教育を修了した者はどんなことも完璧にこなす人間になれると言われている。
PV内では「人の運命を変える」「世界を変える力がある」と。
様々な分野で可能性がある者、家庭の事情で教育支援施設「英才こどもセンター」へ預けられた子供たちがこのプログラムを受けている。
このプログラムの被験者は「アレスクラスター」と呼ばれるんだ」
貴「！っ…」
野「僕も、そのアレスクラスターだ」
竹見と灰崎の言っていたことがなんとなくわかってきたAは息を飲む。
貴《竹見くんが言っていたことは？感情を失うって…》
野「代償みたいなものだよ。力をもらう代わりに」
貴「！」
‘‘なら…茜ちゃんは？”
と、Aは聞きたかったが、聞こうとしなかった。
貴《野坂くんはそのアレスシステムが正しいと思うの？》
野「正しい、か…そうだね。違うことを言えば、僕は「アレスの天秤」を広めて世界を変えていくことを望んでいる」
貴《……私もアレスシステムを受けるの？》
野「……それは…」
貴「……っ」
Aは恐れていた。
初めてここを怖いと思った。
貴「ゎ、わだしは…わたしは、うけなぃ」
野「…うん」
貴「でも…のさ、かくんは、こぇで、ぃいの？」
野「……いいんだ。僕には、やらなきゃならない。
僕はやらなければならないんだ」
貴「……っ」
Aはそれ以上、何も言わなかった。
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作者名：黒なっち | 作成日時：2019年4月2日 23時
