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路地裏に逃げ込んだのが間違いだった。
道を進むと行き止まりに当たり、私の視界には高い塀の灰色だけが広がっている。
「待てA、何をそんなに怒っている。俺が何をしたのか教えて欲しい」
あーもう、追いつかれちゃったよ。
ぐすんと鼻を鳴らす私を見て、いつも以上に眉を下げる小芭内。
「づいでごないでよぉおお、」
「その前に、どうして泣いている。俺のせいなら訳を話してほしい。そうしなければ俺はお前の家まで着いていくぞ」
「ぎゃああ、小芭内のすとーかー!」
びーびーと泣き止まない私の腕を小芭内が仕方ないな、とでも言うように引っ張った。拍子に、私の体は小芭内に抱き寄せられる形でその腕の中に収まってしまった。
「お前はどうしてこうも泣き虫なんだ」
「小芭内……?」
近い、そして暖かい。小芭内の心音が聞こえるほどの距離に自分の心臓が暴れ出す。
「落ち着いたか」
「落ち着かないよ!?」
むしろめちゃくちゃド○○キしてるよ!!
超慌ててますけど!?
しかし、次第に体からは力が抜けて、私は小芭内が背中をとんとんと叩くリズムの中に身を置きはじめた。
わたしの扱い方、ほんとプロだな。
我妻A検定1級あげるよ。
「それで、どうして泣いていた」
「それは、小芭内が私の事わかってくれないからぁ、」
潔癖症のはずなのに、袖で私の涙をごしごしと拭ってくる。
「ねぇ、小芭内は私の事きらいなの?」
「別に嫌いというわけでは、ないが」
「じゃあ好き?」
「……。」
「ほぉらぁぁあ!!きらいじゃん!!びえええ」
「うるさい、少し黙れ」
ぎゃーぎゃーと喚く口は唐突に何かによって塞がれた。柔い感触が食むのを、脳で処理するまでには時間がかかった。
「っ…?」
え、何今の。
まさか、まさか……?
「……嫌いでは、ない」
「ぅえええええ!?!?」
また叫び出した私に小芭内が「うるさい!路地裏とはいえ街中だぞ!」とまた怒号を上げる。
「だって、だって今ちゅーしたじゃん!?ねぇ、なんでぇえええ」
「前言撤回させてくれ、お前のことは嫌いだ」
「なんでよぉぉお!!」
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和加 - 声出して笑ってしまうんですが。面白すぎです笑 (2021年2月3日 6時) (レス) id: 263e001d98 (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク(プロフ) - 完結お疲れ様です。面白かったです!! (2020年12月25日 15時) (レス) id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
モブちゃん - キャァァァァァァ!キュンキュンするわ!伊黒さん、お幸せに! (2020年12月25日 7時) (レス) id: 2f84cbf165 (このIDを非表示/違反報告)
みゆきだいふく(プロフ) - 深紅さん» すみません爆笑しましたwwwwwww (2020年12月23日 21時) (レス) id: a48323ed49 (このIDを非表示/違反報告)
深紅(プロフ) - 私の中でLove so sweetが流れた (2020年12月23日 20時) (レス) id: 1de38023e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゆきだいふく | 作成日時:2020年12月2日 1時